⑦路地裏の先で
「御免なさい。私のせいです」
「半亜人だからか? だからってお前は悪くないだろう」
そう言いながら、原因の一つに幼馴染の存在がある事は察している。
肌は人間と同じ色だが、猫亜人特有の尻尾や頭の上の尖った耳、縦に長い色瞳は隠しようがない。知る者が見れば、ものの数秒で彼女が半亜人である事が理解できる。
「きゃっ」
人ごみに圧されるように、ティリアの肩がすれ違った男と擦れるようにぶつかった。男はティリアに視線を一度落とすが、すぐに前を向いて無言のまま去っていく。
「………大丈夫か!?」
これだけの人通りの多さ。故意かどうか分からない。
例の条件がある以上、無暗にこちらから問題を起こす訳にもいかない。俺は一度振り返り、彼女の様子を確認する。幸い彼女に怪我はない。
ティリアが視線を左右に向けながら、僅かに体を震わせている。
まるで、親に置き去りにされた子どものように。
「ここは人が多い。あの裏手から店に向かおう」
一年も暮らせば、大通り周辺の地理にはある程度詳しくなれる。ここと比べれば、やや治安は良くないが、だからと言っていきなり刃物を向けられる程、この街は腐っていない。
俺は、適当な路地に向かって親指を向けると、彼女を先頭にしながら周囲に目を配るように進んでいった。
路地に入って五分後。
俺達は貧相な顔立ちの男らと目が合い、そして声を掛ける間もなく刃物を向けられてた。
どうやら俺の知らない短い間に、随分と腐っていたらしい。
細い路地を出る直前、大通りからは光の加減でこちらの姿が見えず、路地裏の先の通りでは男達の背中が壁となって、彼等が持つ刃を隠してしまっている。
「へ、へへ。食い物の袋を置いていってくれれば、何もしねぇよ」
汚い身なりの痩せ男の口が無精髭と共に動き、ありきたりで汚い言葉を吐く。




