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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第六章 初級冒険者、試験を受ける
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⑥視線の意味

「それにしても………相変わらず目立ってるな」

 水筒をしまいながら、俺は周囲の視線に眉を潜めていた。

 大量の肉と野菜を朝から買い付けている姿が余程珍しいらしい。しかも一人は冒険者、もう一人はメイド服と、関係を想像し辛い組み合わせである。周囲の人間達は特に声も手もかけてこず、止まって凝視する程極端な者もいないが、通り過ぎながら無言の視線というのも、決して気持ちの良いものではない。

「………」

 ティリアは下を向いて黙ったまま、何も答えない。


―――何故奴隷になっていたのか。


 それが、簡単に聞いて良い話でない事は、流石の俺にも分かる。

 だが、気にならない訳がない。

 何故あの集落を出なければならなかったのか、どうして奴隷になってしまったのか。そして、何故あの男は、数ある奴隷の内、彼女を選んだのか。

 考える程、多くの疑問が生まれては思考の棚へと無作法に並んでいく。

 だが、今ある情報と俺の頭では、予想すら難しい。

 誰に向けての怒りか、それすら分からない感情が沸々と沸き始める。

 俺は首を左右に振った。

「さぁ、あと一カ所だ。さっさと回ってしまおう」

 残るは、鉄と銅の引き渡し。ティリアが言うには、既に支払いは終えているとの事で、後は受け取るだけらしい。

 俺は腕と体の間で挟むように、二つの大きな麻袋を抱き上げると、未だ冷めぬ朝市の流れへと足を進めていった。

 


 さて、流石の俺も異変を感じ取り始めていた。

 まるで開店前の仕入れの様な肉と野菜の大袋。そして、初級冒険者と奴隷のメイドという接点が見え辛い二人。

 その違和感は理解できる。

 だが、その視線を放つ人々の目が、俺が最初に感じ取っていた『物珍しさ』とは異なると気付いた。

「嫌な目だ」

 聞こえない程度に小さく零す。

 無言のまま引くような細い眼の数々。

 彼らが見せる眼を俺は知っている。俺自身が、その眼で見られた事があった。

 それは幼い頃、無断で洞窟に入ったあの日の村人達の眼。その後、事ある毎に向けられた眼である。


―――厄介者、そこに含まれる侮蔑の感情。


 その言葉が蘇る。

 気が付けば、ティリアが俺の背中の服の端を掴んでいた。

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