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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第六章 初級冒険者、試験を受ける
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⑤買い物

 一軒目は肉屋。

 大通りの中でも一際店の前で人だかりが出来ている。

「鶏を三キロ、ね」

 今一度買い物のメモを確認し、後ろにいるティリアの顔を振り返った。

「どちらが買うのかとか、指示はあったか?」

「………いえ、特にそこまでは」

 やはり、何処か余所余所しい。


 ティリアと村で別れたのが、ほぼ二年前。元々積極的な性格ではなかったが、ここまで消極的でもなかった。過去の記憶の分、補正がかかってしまっているかもしれないが、彼女の身に何かが起きて、そうなったのかは分からないし、聞く訳にもいかない。

「とにかく、買い物を済ませてしまおう」

 あれこれ考えても仕方がない。俺は先頭に立って群衆の中へと体を入れ込んだ。



「ほら、買えたぞ」

 歴戦の主婦に揉まれながらも、体を潜り込ませて戦う事数分。ようやく店主の前へと辿り着いた先の勝利であった。

 俺は処理が済んだ六羽分の鶏が入った大きい麻袋を両手で抱え、大通りへと戻る。通り過ぎ様に、多くの視線がこちらに向いていたが、それは止むを得ないと無視を決め込んだ。


「………私が持ちます」

 手ぶらの幼馴染(メイド)が、周囲の視線にやや怯えつつも、気まずそうに声をかけてくる。

「いや、これ位は持たせてくれ。もう何年も相手をしてやれなかったからな………さて、次は野菜だったな」

「………はい」

 元々、自分なりに見栄を張ろうと全ての荷物を持つつもりだったが、重さが重さだけに、最終的にはある程度持ってもらう必要になるだろう。だが、それまでは自分で荷物を持つ事にする。今の俺に出来る事は、そう多くない。



「二件目も終了………っと」

 思わず深い息が漏れる。

 朝市の中、盛況な青果店からの脱出に成功した俺は、店の外壁で鶏肉と一緒に待っていたティリアと合流を果たす。

「ちょ、ちょっと………降ろさせてくれ。うひぃ」

 大きな麻袋に詰められた野菜一式を一旦草の上に降ろすと、俺は痺れていた掌を何度も振り、痛みを散らす。そして、背嚢から水筒を取り出すと、水分をこれでもかと補給する。


「ぷふぅ!」

 血管に冷たい水が染み込むように、体が上から下へと一気に冷えていく。

「ティリアも、何か飲むか?」

 同じ水筒は無理でも、露店なり商店なりで、飲み物を買える程度の蓄えはある。

「いえ………大丈夫です」

「そう、か」

 少しでも話題が増えればと思っていただけに、残念である。

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