③朝市へ
外に出ると、太陽はまだ東の遠い山々に乗っているが、日差しの鋭さに思わず目を細める。
ようやく訪れた幼馴染との時間。実感はまだ少ないが、兎にも角にも穴の開いた時間を取り戻さなければならない。
「ひ、久しぶりだな」
気合を入れたが、我ながら良い言葉が出てこなかった。
相手も小さく頷くだけで、会話を広げようとしない。その点においては、昔と何も変わらない。
「あー。と、取り敢えず何を買うのか、教えてくれるか?」
「………これです」
ティリアがメモ用紙を手渡して来た。
それを受け取り、目の前で開いて確認する。
「何々、鶏肉と………あと、こいつらは………あぁ、全部野菜か。それを、それぞれ三キロ分。それと、依頼していた鉄と銅の引き取り………何に使うんだよって、おいおい、十キロかよ」
量はともかく、まぁ中身は普通。至って庶民的であり、冒険者的。しかも、どこで買うかまでの指定さえ、されていた。
「どれも中央通りの店ばかり………これの一体どこが、試験なんだ?」
いくつか聞いた事がある店がメモに並ぶ。路地裏にひっそりと佇む秘密の店でもなければ、合言葉で秘蔵の品を受け取る訳でもない。ショーンの言う通り、何も仕組まれていないならば、俺は今回の依頼自体が、あの男の児戯ではないかと疑いたくなる。
「金は………あぁ、あるのか。まぁ、当然か」
ティリアがエプロンのポケットから財布を見せて中を開けたが、素人目にも十分な銀貨と大銅貨が詰まっていた。もしかしたら、その財布を守る事が本当の目的かもしれない。万が一にも、財布を失った場合、貧乏冒険者の俺には立て替えられるだけの力はない。
アリアスの街は、かつて南方の山脈を越えた先の国との行き来をする者達を繋ぐ宿場町程度の集落だったらしい。それから随分と時が流れ、今では街としての賑やかさとなったが、今でもその要素は強く色残っている。
加えて、先の大戦でウィンフォス王国が東のカデリア王国を併合してからは、この街を通して南方への物資の輸出入が日に日に大きくなり、数十年でアリアスは二倍、三倍へと大きくなった。




