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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第六章 初級冒険者、試験を受ける
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②幼馴染からの敬語

「どうした? 拍子抜けしたか? てっきり無理難題を出されると?」

「まぁ………な。正直驚いている」

 視線をずらしながら短く答える俺に、ショーンが見透かしたかのように頬を緩ませてくる。

「だが、簡単だと思う依頼程、冒険者は気を引き締めた方がいい。昔から言うだろう? 強い敵には『逃げる』という選択肢を取りやすいが、その逆は難しい。冒険者の死亡率で最も高いのは、高い難易度よりも、実力より低い難易度の時なのさ」

 聞いた事はある。

 何も冒険者に限った話ではないが、油断する程死にやすい。


「だからって、別に街の買い物で死ぬ事はないだろう」

「滅多にないというだけだ。どの街にでも、事件は少なからずある………ん? あぁ、勘違いしないでくれ、この件については、俺が何か仕組んだという事はない」

 どうだか。

 今までの言動から、事前にその辺のゴロツキ達に声をかけていたとしても、それ程驚かない自分がいた。

 だが、それを口にしても証明する方法はない。今は目の前の男の機嫌を損ねないようにするだけである。


「買い物のリストはティリアに渡してあるから、後で確認してくれ」

「………分かった」

 道中何も仕組んでいない。ショーンは、もう一度同じ言葉を使い、あくまでもただの買い物と護衛だけだと強調した。

 どうだか。何度も言うと、反って怪しく聞こえるものである。

 話を終えると、隣の部屋から買い物籠を前に下げたメイド姿の幼馴染(ティリア)が姿を現した。


「………ティリア」

 懐かしい名を呼ぶ俺に、彼女は一度視線を向けてきたが、すぐに体ごとショーンへと向け直していた。

「ティリア。気を付けて行ってきなさい」

「はい。御主人様」

 小さく丁寧に一礼、さらには先輩でもあるコルティにも会釈すると、彼女は入口側に立っていたこちらに向かって歩き出した。

 そして、俺の目の前で止まる。

「………よろしくお願いします」

「あ、あぁ」

 同郷だったはずだが、初めて使われた言葉だった。

 一礼と敬語で返される違和感を覚えながら、俺は頷く以上の行動に移れなかった。

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