①朝食後の試験
翌朝。
俺は日が出る前から、約束の扉の前で直立していた。
「………いくら何でも早すぎだろう」
その姿を見かねたのか、やや眠そうな目でショーンが扉を開ける。
「おはようございます!」
気合は十分。覚悟も昨夜から一向に衰えていない。俺は精一杯の挨拶で先手を打った。
「うるせぇ。近所迷惑だ、馬鹿垂れ。こっちは準備どころか、朝飯すら食べてないんだ………あぁ、もう、中に入ってちょっと待ってろ」
逆に怒られた。
「お前の分はないぞ?」
「いらね………いや、大丈夫です。一応食べて来たので」
居間のソファーで朝食の様子を見せられる事、数十分。ショーンはメイドのコルティと幼馴染のティリアが運ぶ朝食に急ぐ事無くゆっくりと手を動かし、最後に珈琲を飲み干した。
「さて、待たせたな」
パンくずがついていた口元を親指でなぞるショーンが、俺の向かい側のソファーに腰かける。
「それで、試験の内容は?」
一言も話さずに待っていた分の焦りが口に出る。
彼もその事を察したのか、特に諫める事もなく、両手を小さく広げて説明を始めた。
「内容そのものは簡単だ。リュウ、お前さんには、うちのティリアと一緒に買い物に行って欲しい」
「分かった………って、は? 買い物? 何だ、それだけでいいのか?」
「それだけだ………あぁ、冒険者風に言えば、護衛任務ってやうだ」
てっきり嫌がらせかと思える程、高難易度の討伐あたりかと思っていただけに、俺の感情が一気に落下する。
「ただし、条件がある」
ショーンが指を二本立てた。
「まず、ティリアに怪我一つない事。そして、お前さんが問題を起こさず、誰一人傷付けない事だ」
指定された品を購入し、無傷帰還する事。それが試験の全容だった。
「何も起こらなくて不合格、なんて事はないよな?」
「ない。その時は、普通に合格とするから心配するな」
ショーンが肩をすくめて即答する。




