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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第五章 初級冒険者、実力を知る
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⑪隠す強さ

「それじゃぁ、先生! またよろしくお願いします!」

「あぁ。今日は早く寝ろよ?」

 怪我の治療を終えるなり、アルゼットを慰労する飲み会が、落ちた本人の意思で強制的に主宰された。怒涛の飲み食い二時間の内、半分を模擬戦の振り返り、残りを彼女自身による先生(ショーン)の自慢話で埋め尽くし、彼女の酔いが回った所でお開きとなった。


 外で別れ、ふらつきながら小さくなっていく彼女の背中を見送りながら、俺は隣に立つほろ酔い姿の冒険解説職(ショーン)を見上げる。

 未だに信じられないが、見たものは全て現実である。

 冒険解説職(チュートリアラ―)として嘲笑の対象となっていた彼は、あらゆる武器を使いこなし、銀級(シルバー)の中堅冒険者が攻撃を当てられないばかりか、一撃で倒せる実力を持っていた。

 白級(ホワイト)の目から見ても、彼に二つ名があってもおかしくない。

 だが、彼程の実力者が、ギルド内で一切話題になっていない。それが不思議で仕方がなかった。

 冒険者になって一年と、日の浅い俺の知識にない事は多々あるが、他の冒険者が彼の事を気にかけてもいない。それ所か、揶揄する対象とされていた。

 有り得ない。何故彼が、それを受け入れているのか理解できなかった。


「………なぁ」

 メイドのコルティは飲み会に参加せずに、早々と帰宅してしまったが、俺は念の為と周囲を確認してからショーンに声を掛ける。

「んー?」

 火照った頬を手で扇ぐ彼が、視線を向けて来る。

「あれだけ強いのに、周囲に馬鹿にされて………悔しくないのか?」

 率直な疑問をぶつけた。

 俺だったら耐えられない。自分の実力をこれでもかと見せつけ、口だけの奴等を黙らせている。


「そりゃぁまぁ、悔しくないと言えば嘘になるがな」

 ポケットに手を入れ、ショーンは冷えた夜空を見上げた。青や白、赤い星々が散りばめられているが、大小二つの月の明かりが、我先にと主張している。

 一呼吸置いた彼が、言葉を続ける。

「そんな奴等を相手にしても仕方ない、相手をしても疲れるだけだって思う事にしている。どうせ目の前で実力を証明したって、心の底から謝るつもりも、改心するつもりもないだろうし、そもそもそういう奴等は、自分の人生が詰む直前まで治らんだろうさ」

「………そうかもしれねぇけどさ」

 真理に近い事実であった。

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