⑩判定
「そこまで!」
直立して見届けていたマーガレッタ嬢が、模擬戦の終了を宣告する。
そして振り返り、こちらに視線を送る。
「双方の見届け人。何か不審な点はありましたか?」
不審な点どころか、二人の姿を追いかけるだけで手一杯だった。
「いいえ、御座いません」
静かに立ち上がったコルティだけが明確に回答し、慌てて立ち会った俺はそれ以上何も動けず、口を小さく開けたまま何も言えなかった。
その姿をやや困った顔で見ていたマーガレッタ嬢だったが、すぐに表情を切り替えて練習場へと振り返り直す。
「それでは、試験官。こちらでは違反がないと判断されたので、合否の判定をお願いします」
全てはショーンに託された。
彼は既にアルゼットの所まで歩き始めており、丁度手を伸ばして彼女を起き上がらせた所であった。
「か、完敗です。先生」
「いや、本当に強くなったな。特に最後に放った技は、物理と魔法でそれぞれ同時に発生させたものだろう? 対魔法、対物理の障壁で防いだとしても、必ずどちらかは相手に届く。あれを完全に防ぐ事は、難しいだろうな」
アルゼットの肩に付いた汚れを払い終えると、ショーンは真っすぐ彼女に視線を送る。
「もう半年も修練を積めば、誰が見ても金半級に相応しい実力が身に付くだろう」
「はい。御指導、有難うございました」
深々と、そしてゆっくりとアルゼットが頭を下げた。
不合格。試験官の裁量により、再受験は半年以降と判断された。
全てを終え、ショーンが肩をすくめて笑みを零す。
「他の試験官に頼めば、合格していてもおかしくなかったのに………身内に頼む時点で、つくづく不器用な奴だよ。うちの生徒は」
「良いんですよ。そうでもしないと、先生は私達と真面目に戦ってくれないんですから」
体の負担が大分回ったのか、アルゼットは一瞬横へとふらつく。だが、すぐに足を出して転倒を防ぐと、そのまま練習場を去っていった。
「………すげぇ」
俺の開いたままの口からは、その短い言葉しか出せなかった。




