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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第五章 初級冒険者、実力を知る
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⑨巻き起こる風

 動きを止めた彼女に、ショーンが大きく前へ踏み出して追撃へと移る。

「なんちゃって」

 大きく踏み出した足を見計らったアルゼットが後方へと一回転、ショーンの下顎を蹴り上げる狙いだったが、急遽足を止めた彼の行動により不発に終わる。

「ちぃっ!」

「今度こそ隙あり、だ」

 再度足を進め、ショーンが後方へと下がった彼女を追いかける様に突きを放つ。

「トルネイド!」

 即座にアルゼットが地面から旋風を巻き起こす。天井に向かって発生した風の渦は、ショーンの体を僅かに浮かせ、その動きを妨害する事に成功する。


「今っ!」

 即座に彼女も突進し、風の壁からはみ出ていたショーンの槍の柄を剣で弾く。

 槍は風邪に巻き上げられ、彼の両手から大きく離れていった。

「覚悟!」

 風を止め、そのまま突きへと移るアルゼット。

 だが、そこにショーンの姿はなかった。

「いい攻撃だ!」

 声は上から落とされる。

 風を利用して上空へと飛び上がっていたショーンは、打ち上げられた槍を空中で掴むと、それを投げ放つ。


「ぷ、プロテクション!」

 顔を上げる時間しか残されていなかった彼女が、即座に魔法障壁を展開するが、一秒も耐えられずに障透明な壁はガラスに近い破砕音を立てて砕け散る。

 相殺。

 ショーンの槍は軌道を反らされ、彼女の足元に突き刺さった。


「ならば、着地の隙を狙わせてもらいます!」

 今度こそと、武器を失ったショーン目がけ、アルゼットは剣を石床から天井に向けて半月閃を描く。

「魔導烈風刃!」

 剣の軌跡と同じ風の刃が二枚同時に放たれる。

「これが私の成果です!」

「こいつも良い技だっ!」

 落下中のショーンが腕を引くと同時に、彼女の足元から槍が抜けた。そして、極細の糸で引き寄せた槍を三度手に納めた彼は、着地点に槍を突き刺して足代わりにすると、地面に足を付ける事なく、風の刃を飛び越える形で半回転する。

「アル、耐えろよ!」

 縦の円軌道と同時に、地面から抜けた槍が更に大きな軌道を描きながら、彼女が放った倍はある風の一刃を発生させた。

 咄嗟にアルゼットは魔法障壁と丸盾で構えたが、まるで空気の塊に弾かれたかのように後方へと吹き飛ばされる。

「ぐっ!」

 そして背中を壁に叩き付けられ、そのまま擦るように倒れ込んだ。

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