⑧静と動の戦い
「さて、それじゃぁ始めましょうか」
マーガレッタ嬢が立ち上がり、観客席の先頭へと歩み始めた。
そして右手を真っすぐ天井へと上げる。
「それでは昇級試験の模擬戦を行います。魔法も含めた無制限試合、制限時間は十分」
遅れてショーンも開始位置に立つ。
だが、彼は槍の先端を地面に向けたまま未だ正面の相手に向けて構えていない。
「始め!」
瞬間。
アルゼットはショーンの側面から姿を現し、既に斬りかかっていた。
「み、見えねぇ!?」
俺の目には彼女が僅かに前のめりになった瞬間に姿が消え、見えた時には既にショーンの側面に長剣を振り払っていた。
だが彼は動じる事無く地面に槍先を食い込ませ、柄の金属部分で彼女の一撃を受け止めた。
「あれを片手一本で止めれるのかよっ!」
「流石、御主人様」
主人が攻められたにも関わらず、俺の横でコルティが静かに呟く。
「どうした? もう終わりか?」
受け止めたままのショーンが、力を込め続けるアルゼットを挑発する。
「まだですっ!」
長剣を一旦引き、今度は正面からの突きを放った。
だが、それも彼が槍側へと体を半身反らす事で易々と回避する。
「やああぁぁぁぁぁぁ!」
繰り出される刺突の連撃。彼女は長剣の動きをそのまま次の動作へと繋がるように、まるで舞の如く、刺突から四方からの斬り払いへと切り替えていく。
俺はその半分の太刀筋も見えていない。だが、ショーンは突きのみを躱し、それ以外の斬撃を槍の刃や柄を擦らせるように、本来の軌道を変えさせていく。
「あ、隙見っけ」
「くぅっ!」
連撃を繋ぐ事に夢中だった彼女の固定した視線を見極め、ショーンは前に構えたままの槍を軽く突き出した。前に出ようと上半身を屈めていたアルゼットは、無理矢理体を大きく仰け反らせて躱すと、更に丸盾を胸の前に敷いて槍の軌道を上方へと反らさせる。
だが、その代償として、彼女は今にも倒れそうな程に後方へと姿勢を崩していた。




