⑦獲物は槍
取り敢えず、ここに座っていろとアルゼットから指示を受け、見学席に座らされている。訓練場からは人一人分高い位置にあり、遅れてコルティとマーガレッタ嬢が俺の隣に着座する。
「おやおや。誰かと思えば、この前の白級の坊やじゃないか」
笑顔のままの中年受付嬢がこちらを見て笑い始めた。
「………アルゼットさんにも困ったものです」
続いて、メイドのコルティが視線を合わせないまま不満を漏らす。初対面の頃から、何かと彼女はこちらを睨んでくる。
「俺だってよく分かりませんよ。いきなりここに呼ばれたんですから」
お陰で、今日の稼ぎはゼロである。昨日までの稼ぎを崩さなければならない。
「先生、よろしくお願いします」
アルゼットが深々と頭を下げる。
ショーンは彼女の強かさに止む無しと大きく息を吐き、左右の腕を何度も伸ばし始めた。
「分かっていると思うが、これは正式な依頼であり、試合だ。そして、お前の等級が次の段階に相応しいかを確認する試験。唯でさえ、俺達との間に利害関係が少なからずある以上、生半可な結果では合格にしない………それは覚悟してもらう」
ショーンの目が細まっていく。
「承知の上です。私も、師と仰ぐ人からお情けで上げてもらったと、同業者達から後ろ指を向けられたくありません」
「ふん。口も達者になったな」
含むようなショーンの笑みにアルゼットが満面の笑みで返すと、彼女は細い長剣と丸盾の具合を確認し、開始位置の地面を爪先で軽く削る様にして立つ。
対するショーンは、彼女の装備を確認した後、訓練場の壁に立てかけられている武器を選び始めた。
「金半級狙いなら………この辺りでいこうか」
そう言って、刃先を潰してある鉄槍を掴む。
「槍? あい………あの人は槍も使えるのか」
いつも片手剣を帯びている為、槍を振るう姿に想像がつかない。
「御主人様は、基本的にどのような武器でも使いこなす事が出来ます」
騎兵槍の扱いから、それこそ徒手空拳の格闘技も問題ないとコルティが説明する。
「ま、冒険解説職を名乗る位だからね、依頼主の冒険者がどんな装備でも、適切に助言できなきゃ意味がないさね」
腕を組み、自分事のように自慢するマーガレッタ嬢。
だが、俺が知る限りの冒険解説職はそこまで万能ではない。全ての武器を、それこそ銀級並に扱える人間が、街単位でごろごろ存在している訳がない。




