⑥立会人
「あー、えーと。まず質問があるのですが」
ここだ。俺は小さく肩の高さまで手を上げる。
「あい………いえ、ショーンさんは、そんなに凄い人なんですか?」
「んー。リュウ君は、これまで何も感じなかった?」
顎の下に人指し指を置くアルゼットは、こちらの質問に質問で返してきた。
感じる? 何を? 単純な言葉だが、その意図が読み切れない。
「た、確かに、あの人の助言は的確でした。まぁ………やや口煩い気もしますが………」
「口煩い点については同感かな。私も最初の頃は余りの理不尽さに、散々先生に反抗しちゃったからね」
成程成程と彼女が腕を組み、一定の理解を示す。
「でも、そっか。貴方はまだ見た事がないんだ」
「見る? 何を?」
そもそも話の先が見えてこない。彼の仕事が的確である事と、戦える強さが常に等しく結ばれるとは限らない。
アルゼットはやや斜め上を覗くようにして考えると、急に両手を胸の前で叩いた。
「そうだ、これも何かの縁! 私にいい考えがあるよ!」
―――え、何?
「だからって、見届け人をこいつにする必要はないだろうよ。アルゼット」
予定された時間五分前。地下練習場へと到着したショーンは、俺の顔を見るなり、後頭部を掻きながら呆れる所から会話を始めた。
「すいません、先生。まだ彼は見た事がないとの事でしたので」
「別に見せるつもりも………まぁ、互いに見届け人は一名ずつだし、親族以外であれば他に条件もないから、白級でも違反じゃないけどさ」
ショーンはメイドのコルティを同伴させていた。
アルゼットから事前に聞かされていた話だと、模擬戦においての決着に物言いが後から起らぬよう、ギルド従業員と双方から一名ずつ、計三名の立会人が立てられる。その内、二名以上が模擬戦に違反なしと認められた後、戦った試験官が昇級の是非を決める事になる。
ギルドからはお馴染みマーガレッタ嬢。そしてアルゼット側からは、俺が立会人となった。
「どうしてこうなった」
訳が分からない。




