②積み上がっていくもの
「今日もお疲れさん」
受付で帰還の報告と規定量の鉱物の提出を終えると、ショーンがすぐ近くで待っており、親指をギルド横の食堂へと向けていた。
そして丁度良く開いていたテーブル席に腰掛けると、彼は近くを通った給仕に適当な食事と飲み物をいくつか頼む。
「それで? 今日の稼ぎは?」
「聞かなくても知ってるだろう? ギルドからの定期依頼なんだ………大銅貨五枚と銀貨が二枚、いつもと変わらねぇよ」
テーブルの上に注文した二人分の飲み物が無造作に置かれる。
「おぃ、俺は―――」「いいから飲め。半分以上はこっちでもってやる」
食費も可能な限り節約するよう心掛けていたが、正直な所、空腹と食欲だけはどうにも抑えきれない。俺はショーンの強引さにやや眉を潜めながらも、出されたジョッキに手を伸ばした。
「ん、これは」
匂いからして酒ではない。口の中が一気に酸味で包まれて額に皺が集まるが、喉を通る頃には爽やかな味へと変わり、胃の中から全身に広がっていく何かが、体の疲れを洗い流していくようだった。
「疲れた時は酸味と甘味を含んだ柑橘系がいいぞ。覚えておいて損はない」
「あ、あぁ」
冒険解説職としての依頼は既に終えているが、彼は時折こうして食事や雑談の中にも、冒険者としての知恵や心構えを零していく。意識しての事なのか、単なるお節介としての雑談の一環なのか、それは分からない。
「それはそうと、今回は余った鉱石が余所で売れる分、収入が増えるな」
次々と並べられる肉と野菜の群れに目を輝かせながら、ショーンが笑みを見せる。
依頼にある規定量以上の戦利品は、各自で処分して良い。冒険者の常識の一つであり、俺達にとって生命線の一つでもある。
だが、ここで問題点が一つ。
会話を返せずにいた俺の顔を覗くように、彼は人差し指を立てた。
「大銅貨一枚」
「………は?」
すぐに理解できなかった。
「それで、鉱石を買い取ってくれる店を紹介しよう」
「………くっ」
腹立たしいが、背に腹は代えられない。適当な店に足を踏み入れれば、相手に足元を見られる恐れがある。初見の客や初級冒険者なら、尚更である。
俺は腰の麻袋から大銅貨を取り出すと、やや強めにテーブルに押し付けた。
「ほらよ」
「素直な事は良い事だ。毎度あり」
対価を受け取ったショーンは、ズボンのポケットから古びた小さな手帳を取り出すと、聞いた事がある店を含めて何軒が紹介する。
「心配なら、俺の紹介だと名前を出してもいい」
「………分かった」
嫌な奴だが、彼がもつ知識は本物だと信頼する程度には至る自分がそこにいた。




