①思考の変化
「一つ聞いてもいいか?」
背後から、やや複雑な感情が籠った問いが飛んでくる。
「何だよ」
大きく鶴嘴を振りかざし、岩壁へと向けて振り下ろす。扱いにだいぶ慣れてきたお陰で、狙った場所 に鶴橋の先端が丁度突き刺さり、その下に見えていた茶色の混じった層から、手頃な大きさとなって鉄鉱石がいくつも地面に落ちていく。
「あれだけ威勢のいい啖呵を切っておいて―――」「あぁ」
鶴嘴を振り上げて、落とす。
さらに鉱石が足元に転がっていく。
俺は、そろそろかと腰を降ろすと、転がっている鉄鉱石を、口の開いている背嚢へと次々に詰め込んでいく。
「俺を未だに雇おうとする感覚を教えてくれないか?」
つい数日前まで、殴り合い(一方的に殴られただけ)の関係だった人間を、再び指名してまで冒険解説職として雇う理由が分からないと、ショーンが目を細めていた。
確かに以前の俺だったら、声すらかけない関係になっていたに違いない。
だが今は、それを損な発想だと納得している自分がいる。
「俺は大金を稼ぐ必要がある」
「そうだな」
「だから、確実に稼ぐ必要がある」
「そうだな」
「さらに、確実に帰れる手段も必要だ」
その理屈から導いた答え。それが、冒険解説職を常に雇う事であった。
依頼の達成料から差し引かれるが、それ以上に鉱床の位置や戦闘の助言をしてくれ、効率良く確実に黒字を叩き出す事が出来る。加えて、以前の様な無茶さえしなければ、確実に帰還出来る。周囲から半人前だと笑われ続ける呪いがもれなく付属するが、あの時の魔獣の一撃に比べれば、耐えられない痛みではない。
俺は、そう考える様になっていた。
「成程ねぇ」
筋としては概ね理解したと、ショーンが顎に指を這わせる。
そうする内に、背嚢の中は鉱石で満杯になった。今回は手持ち用の荷袋も持参しており、片手は塞がるものの、容量は単純に倍になる。帰路で魔物に出くわせば、荷袋を安全な場所に置き、戦闘後に再度担げばよい。
幸い、帰りは二度、三度の戦闘のみで済み、最後の戦闘で倒した大黒蟻の素材も持てるだけ回収して洞窟を出る事が出来た。
そして揺れる馬車の中で軽く仮眠を取り、日が沈む直前で冒険者ギルドに到着する。




