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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第四章 初級冒険者、幼馴染と再会する
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⑫絶望の現実、理想の目標

 だが、俺は自分で考えられるだけの金額を提示しようと、ショーンに向かって左右の手を広げてみせた。

「これだけ出す」

「………金貨十枚か」

 指の数から、彼がそう呟く。

 だが、俺は負けるつもりはない。

「違う。()金貨でだ」

 貨幣として最大の価値がある名を口にすると、流石のショーンも眉を動かした。

「………馬鹿か。豪邸に新品の家具をつけても、まだ釣りが飛んでくる額だぞ。もっと現実的な数字をだな―――」「俺が冒険者の頂点になれば、そんな端した金、すぐに払ってやる!」

 拳を見せつける。


 もう後には退けない。それだけの事を吐いた。


「確かにすぐは無理だ。今の俺には力も学もねぇ………だが必ず払ってやる。それまで、あいつを大事に扱っておけ!」

「………分かった。大金貨十枚だな」

 あっさりとショーンが提示額を飲み込んだ。

 彼は腰のポシェットから回復薬を取り出すと、こちらに投げてきた。

「殴って悪かったな。そいつをさっさと使って、しっかりと稼いで来い。何しろ大金貨だ………早くしないと、お前か彼女か、どちらかが年老いて死んでしまうかもしれないぞ?」

 肩を縦に揺らしながらショーンは立ち上がり、奥の部屋へと入ってしまった。

 閉まる僅かな間にだけ見えた隙間の奥から、懐かしい瞳が潤んでいるのが見える。


 俺は一人、部屋に残された。

「………やるしかねぇ」

 今はまだあいつの所に行けない。俺は回復薬を一気飲みすると、それを床へと投げ捨てる。そして、部屋の端に置かれていた自分の背嚢を掴み、音を立てて家を飛び出した。


「大金貨十枚!」

 金貨にして約一万枚。銀貨ならば百万枚である。

 だがそれが、俺自身にとって過去の清算に繋がり、加えて幼馴染に未来を渡す事が出来る。絶望的な金額よりも、明確な目標が出来た興奮の方が遥かに勝っていた。

「やってやる! やってやるぞ!」

 その足で、冒険者ギルドへと向かって行く。

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