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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第四章 初級冒険者、幼馴染と再会する
38/40

⑪幼馴染の価値

「いくらだ」

「………何?」

 予想だにしなかった単語に、ショーンが振り向く。

「あんたは、いくらでティリア(あいつ)を買ったんだって聞いてるんだ!」

 ここまで吐いた以上、後には退けない。

 感情的な自分に嫌気がさす事も少なくないが、ここでは流れに乗るしかない。


「まさか俺から買い取る気か? さっきまで奴隷買いを散々に否定した奴がか?」

「買い取るんじゃねぇ。俺があいつを解放してやるんだ」

 屁理屈なのは分かっている。

「………あいつは半亜人(ハーフ)だぞ」

 人間でも亜人でもない半端者。そんな彼女、彼等を人々は半亜人(ハーフ)と呼ぶ。

「そんなの百も承知だ。俺はあいつと同じ故郷、幼馴染なんだぜ?」

 人間の両親から生まれた突然変異。忌み子。故に集落の中では疫病神扱いされ、ついに両親からも見放されていた事を、俺は小さい頃から知っている。

 奴にとっては、動揺を誘う一言だったのだろうが、同郷の俺には全くと言っていい程に通用しない。


「………いいだろう」

 ショーンが倒れていた椅子を立て戻すとそのまま腰かけ、足を組む。

「お前の()()()で売ってやる」

「なっ」

 その返しは想像していなかった。

 彼がしてやったりと頬を緩ませる。

「そんなに大事ならば、お前があの娘の価値を決めろ。もし、銅貨一枚だというのならば、俺は一切の文句も出さず、首を縦に振ってやる」

 だが、と彼の表情が強張っていく。

「奴隷を買う事を悪だと、その口で堂々と吐いたんだ。ならば良く考えろ。お前がこれから払う金は、単なる奴隷として価値じゃない。お前にとって同郷の幼馴染であり、彼女が解放され、病死か天寿を全うするか………彼女が死ぬまでの時間を自由にさせるだけの金だ………それを言ってみろ」

 何という提案か。頬を伝わる汗に合わせて、顎が思わず引いていく。

 正直、奴隷の相場など知る由もない。金貨ですら握った事もない。彼女の人生の価値など、複雑な計算が出来るだけの学もない。

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