⑩最低の人間
床に響くような足音が聞こえてくる。
唯一動く首を上げ、俺はショーンを睨み付けた。
だが、彼の氷のような眼は一切動く事なく、こちらを見降ろし続ける。
「腹が立てばすぐに大声を上げ、何かと暴力や暴言で解決させようとする。小さな自分を少しでも大きく見せようと必死に強がり、自分に非があっても『でもけど』と言って素直に謝らない。かといって、感謝の気持ちすら自分から言い出せない………お前こそ、冒険者以前に、人として間違ってる所が多いんじゃないのか?」
「………うるせぇ」
「それは、反論する学も根拠もない人間が最後に使う遠吠えだ。俺からしたら、分かりやすい程に負けを認めていると解釈して笑いたくなる。ここまで来ると返す言葉も、怒る価値もない」
圧倒的な言葉の羅列に、何も言えなかった。
それでもショーンは一方的な会話を止めようとしない。
「お前には、相手を尊重するという点が欠けている。自分が優先、自分が正しい、相手の主張など理解しようとせず、知った事かと次々と流していく。後は思い通りになるまで感情のまま行動し、無理矢理方向を変えようとする」
その行動が周囲から見放されていく原因。彼がそう言い切った。
「分別のつく人間ならば、わざわざ相手をせずに距離を取る、気を遣える人間ならば、微笑みながら適当に相槌を打って、静かに去っていく。そう思われている人種がお前だ、リュウ」
その評価に、この一年間の冒険者生活の全てが詰まっていた。
「諦めろ」
ショーンが背を向ける。
「幼馴染が奴隷になっていた事だけは同情するが、今のお前にティリアを守れる力も金もない。仮に俺がこの場で解放しても、彼女にとってはより辛い結末が待っているだけだ」
力も金もない白級の冒険者。
全くもってその通りである。
感情的な行動。
それも否定できない。
「だからって………諦められるかよ」
一撃で笑っている膝を何度も叩き、俺は壁の力を仮ながらも何とか立ち上がった。
全ては、あの時の無力さを払拭する為に冒険者になった。その俺が、あの時守れなかった幼馴染をここでも奪われる訳にはいかなかった。
それだけは我慢がならなかった。




