⑨明確になる立場
「興冷めだな」
ショーンが小さな溜息と一緒に言葉を零すと、俺は宙を舞っていた。
視界が壁から天井、そしてテーブルへと一瞬で転ずる。彼の胸倉を握っていたはずの右手はいつの間にか外されると、逆にその手を中心に自分が回転させられ、そのままテーブルに向かって顔面を叩きつけられていた。
「が、がはっ!」
痛みを通り越して、顔の痛覚がなくなり痺れへと移っていく。
俺は右腕を天井に向けて掴まれたまま、上半身をテ-ブルに押し付けられていた、加えてショーンの左手が俺の左肩を押さえつけており、起き上がる事が不可能なまでに体の関節をきめられていた。
「実力も金もない人間が、何を吐こうが何も意味がない。お前は、まずそこから理解しろ」
「な、何だと?」
これが奴の正体か。見降ろしてくるショーンの鋭い瞳に、俺は息苦しい中で精一杯反抗する。
だが、まるで岩が背中に乗っているかのように、一向に体が動かない。
「くそっ、冒険解説職如きが! え、偉そうに!」
「ほぉ。いつから白級如きのお前が、偉そうにモノが言える立場になったんだ?」
何でこんな事に。
俺は何も間違った事は言ってない。体は動かないが、怒りの感情だけは未だに体の中で燃え上がっている。
だが、何も答えられない俺の表情を見ていたショーンは、溜息と舌打ちを順番に吐き出す。
「超過勤務もここまでくると最早、慈悲だな。いいだろう。頭と性格の悪いお前に、冒険解説職として、一番大事な事を教えてやる」
体を固定させていたショーンの両手の力が一気に緩む。
ここだと思った。
「てめぇこそ、いい加減に………ぶっ!」
だが俺は、起き上がった瞬間を見計らったかのように殴り飛ばされる。そして、そのまま扉に叩き付けられ、背中を擦るように床へと座り込んだ。
細腕の一振りだったが、彼の一撃はあの時の魔獣のように重たかった。
意識ははっきりとしているが、体が全く動かない。




