⑦奴隷
「は?」
視界の中心に、呆れた表情のショーンが収まっている。
「は? じゃない。うちのメイドにいきなり何をする」
「うちのメイドって………あぁ、ここで働いているって事か」
確かに、年端もいかない彼女が街で生きていく為には仕事が必要だ。口下手だが、昔から家事手伝いをさせられていた手前、使用人という職業にも納得できる。
「………えっと、その」
ティリアは上手く言えないのか、両手を胸の前で握りながら、視線を泳がせていた。
「コルティ。悪いが、ティリアを奥の部屋に」
「畏まりました」
スカートを小さく摘まんで一礼したコルティが、ティリアの肩にそっと手を置くと、彼女を奥の部屋へと静かに誘導していく。
扉が閉まるのを横目で見届けたショーンが、軽い咳払いと共にこちらに視線を戻してきた。
「………知り合いか?」
彼の短い問いに、俺は一度だけ頷く。
「同じ村の出身で、小さい頃から一緒に遊んでいたんだ………それにしても、同じ街にいたのに、今まで全然気が付かなかったぜ」
偶然も偶然。だが、これからいつでも会えると思うと、楽しみが増えるというものである。既に頭の中では一年分の思い出話が列をなし、喉元まで並んでいるかのようだった。
それにしても疑問が尽きない。
「なぁ、ティリアとは一体いつ知り合ったんだ? しかも冒険解説職で、メイドが二人もいるなんて、めちゃくちゃ贅沢してるじゃないか」
そんなに稼げる職業という印象は全くなかった。思えば、街中に庭付き二階建ての一軒家を構えている事だけでも凄いと、今更ながらに気付く。
だが、目の前の男の表情は、こちらとは全くの逆だった。
「ティリアと会ったのは、大体二か月前だな」
「二か月前。じゃぁ、それまであいつは村にいたって事か」
「いや………故郷は半年前に出ていたと聞いている」
おかしい。
そうなると勘定が合わない。
「え? じゃぁその間、あいつはどこに?」
「………奴隷商人の檻の中だ」
その言葉に、俺の中の熱が一気に零下へと落ちていった。
「奴隷? まさか、あんた………」
奴隷、そして今は彼の家に仕える使用人。複数の情報から導かれる答えが結びつき、線となっていく。
ショーンは口元を隠すように、テーブルの上で手を組む。
「俺が、ティリアを買った」




