④魔獣の正体
「………あ、ありがとうございます」
「はい、よくできました」
ショーンの満足そうな頷きに、猫メイドのコルティが俺の前に持っていた朝食を次々と並べていく。木製の器の上には数種類の生野菜が盛られ、別の平皿には小麦色の焼き目がついたトースト、さらにベーコンと目玉焼きが乗せられていた。
「………すげぇ」
この街の上級宿でしか見られない品揃えである。
「自慢じゃないが、彼女の飯は旨い」
ショーンは自慢気に頷きながら笑い、いいから食ってみろと勧めてくる。
胃に目が付いているのか、急に腹が勝手に唸り始めた。
俺は真っ先にトーストに両手を伸ばし、そのままかぶりつく。
「………うまい」
焼けたパンの外側の歯ごたえと、中に残っている柔らかい部分が口の中で混ざり合い、程よい噛みごたえを残している。同時にベーコンの脂身から旨味、そして後から漏れる目玉焼きの甘さが口の中に残っていたパンの隙間にゆっくりと染み込んでいき、口の中の味を徐々に変えていく。
俺は口の中を冷たい牛乳で流し込み、空になった口の中を再びトーストで埋め尽くす。
サラダも絶品だった。一見、何もかけらていないように見えたが、口の中に入れるとほのかな塩味が野菜の水分と混ざり合い、体の隅々へと染み込んでいく。
たったの十分で、俺はテーブルの上のものを全て平らげていた。
「そういやぁ、昨日二層にいた奴は、一体何だったんだ?」
腹が膨れると思考に余裕が出てくる。俺は思い出したかのように、昨日の件についてショーンに尋ねた。
「白級の俺が言うのも何だが、あの魔獣は、どう考えてもあの洞窟で沸くような存在じゃぁねぇだろ」
「あぁ。あいつの正体は牛型の魔獣デスタウロス。何者かによって召喚された魔獣が暴走していたというのがギルドの見解だ………脅威度は銀級だ」
「………マジかよ」
冒険者の等級と魔物、より上位の魔獣の脅威は同じ等級で表される。
冒険者としての銀級は一流の証であり、冒険者全体の二割未満を占める。各街の冒険者ギルドに数名いるかどうかの実力者である。そして、その等級と同格の魔獣ならば、白級など路傍の小石、いや砂粒に等しい。




