①小さな部屋
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後から聞いた話では、俺は通りすがりの冒険者に命を救われたのだという。
そんな事すら知らず、知らされず、村の掟を破り、洞窟に潜った六歳の俺には、今見えている全てが世界の終わりに等しい光景だった。
つい数時間前まで一緒に遊んでいた親友が、村人が引く荷台に乗せられている。藁の目隠しが被されているが、隙間からはみ出ている小さな手足は、荷台と同じ揺れ方をしているだけで、それ以外の動きをしていない。
当然だ。
死んでいる人間が動くはずがない。
その親友の妹。同い年の幼馴染の少女が、洞窟を出る前からずっと泣いている。全身の水分を全て失うかのように嗚咽を混じらせて涙を流している。その涙は一体誰の為か。当時の俺には考える力もなく、この先何が待っているのかさえ分からない。
唯々、家に向かって歩くだけが精一杯だった。
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「………何だよ。ここは」
目が覚めると、俺は木目の天井を見上げていた。清潔な白いシーツに包まれ、背中は柔らかいベッドに沈んでいる。ここまで上等な寝具には、今まで泊まってきた宿どころか、村にあった自宅にすらない。
上半身を不器用に起こし、周囲を確認する。
宿屋の様な質素で小さな部屋。開いた小さな窓からは涼しい風が入り込み、日差しがすぐ傍の机を半分程照らしていた。
机の上にあった木製の水差しの中を確認した俺は、隣にあった木のコップに水を注ぎ、一気に飲み干す。
「俺は確か洞窟で………いつっ」
体を無意識に曲げると、肩から胸に痛みが鋭く走る。
清潔なシャツをめくると、肌には包帯が何重にも巻かれていた。
徐々に記憶が鮮明になっていく。
悲鳴を聞いて、冒険者を救いに行こうと二層へと潜った。そして、見た事もない魔獣と遭遇した。
「俺は………生きているのか」
自分でも馬鹿な事を言ったと思ったが、口にする事で現状を認識しておきたかった。良く見れば、部屋の隅には自分の武具一式が丁寧に置かれている。




