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Lost13 無名の青年が無名で終わる物語  作者: JHST
第三章 初級冒険者、二層へ行く
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⑦異変

「大丈夫か!?」

「これは………酷いな」

 俺が男を抱きかかえ、ショーンが容態を確認する。だが、仔細を見るまでもなく、男の重傷さは目に分かって酷いものであった。

 左腕の損失に加え、頭部側面からの出血。俺の腕から下半身にかけて、既に大量の血液が纏わりついている。


「た、助けてくれ………皆、皆死んじまった」

 男の目に光は殆ど残されておらず、うなされているかのように同じ言葉を繰り返していた。

「くっ!」

 俺は腰のポシェットから支給された回復薬を取り出す。

 だが、それをショーンが手を伸ばして静止させてきた。

「何するんだっ! あれかっ!? 支給品を他の連中に使うなって事か!?」

「………いや、彼はもう助からない。無駄遣いは止めるんだ」

 呼吸が浅く、ゆっくりと変わっていく中年冒険者の男。良く見れば、馬車に乗っていた者の一人だ。

「まだ分からねぇだろ!」

 制止を振り切り、俺は支給されたポーションの蓋を口で開け、男の開いたままの口に流し込む。

 だが、既に男に飲み込む力はなく、むせる力もなく、口の端から液体が漏れ出ていく。

「くそっ! 頼む! 飲んでくれ!」

 本来であれば、傷口が仄かに光を放ちながら傷が癒えていくはずだが、男の体には何も変化が起きない。


 数秒後、男の目から光が完全に潰えた。

 ショーンが彼の首に下がっていた冒険者証を手に乗せる。

青銅級(ブロンズ)か。確か、もうすぐ鉄級(アイアン)の昇級試験を受ける予定だった冒険者だ………そんな中堅冒険者が、二層で大怪我を?」

 俺の腕から熱を奪うように、男の体がどんどんと冷たくなっていった。


―――死。

 

 この経験は、俺にとって初めてではない。

 親友を失ったあの日が、自分が無力だったあの日の怒りが、自分の中で言い様のない感情という力に変わっていく。

 今は無力な自分ではない。あの頃とは違うという囁きが、心の中で何度も反響していた。

「くそっ! これ以上はやらせねぇ!」

「待て! 何かは分からないが、相手は青銅級(ブロンズ)ですら歯が立たないんだぞ! あぁ、もう! 少しはマトモになったと思ったらこれだっ!」

 ショーンの静止を振り切り、俺は二層へと向かって走り出していた。

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