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Lost13 無名の青年が無名で終わる物語  作者: JHST
第三章 初級冒険者、二層へ行く
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⑥自己責任と義務の狭間

 歩く事、数十分。

 間もなく二層の入口のある広間へと続く通路で、俺達は洞窟内で反響した高い声を聴く。

「何だ? 今、悲鳴のような声じゃなかったか?」

 この先で誰かが戦っているのか。俺は一旦立ち止まり、腰に下げた剣に手を乗せる。


 その手の上に、ショーンが自分の手を乗せてきた。

「待つんだ。仮に戦いだったとしても、君が助けに行く義務はない」

 完全なる自己責任。

 義理人情から助けに入って助かる命もあれば、逆に失う可能性もある。余程腕の立つ中級以上の冒険者以外であれば、同業者を見捨てたとしても罰則(ペナルティ)はない。

 人情と薄情が表裏一体の世界、冒険者とはそういう職業である。

 ましてや最下級の白級(ホワイト)が加勢したとしても、戦力としてはたかが知れている。ショーンは明言こそしなかったが、彼の伸ばした手には、その意図も込められている。俺はそう感じ取った。


「………因みに、冒険解説職(チュートリアラ―)には救助に向かう俺を止める権限はあるのか?」

 理不尽な力で弱者が捻じ伏せられる光景は、既に経験している。まっぴら御免だ。二度と見たくもないし、静観を決め込みたくもない。脳裏で幼い頃の悪夢が湧き出ては、俺の心に次々と火をくべていく。

 ショーンは静かに俺の手から離れていった。

「へ、悪いな。何かあったら助けてくれや」

「………分かった。だが無理はしないでくれ」

 俺は背嚢を通路の岩陰に隠すと、ショーンと共に通路を走り抜けていく。



 二層に繋がる大広間。

 第一層を守護する魔物もおらず、広い空間は静かさを保っていた。

「ここじゃないのか」

 てっきり大広間で戦闘が行われていたと思っていただけに、俺の頭は急な冷静さを被る形となった。

「誰か! 誰かいないのか!?」

 思わず声を上げていた。

 

 返答はない。

 気のせいか。


 そう思い始めた頃、二層へと続く階段から一人の中年冒険者が這い出て来た。

「た、助けてくれぇっ!」

 大の男の必死な声に、尋常ではない事が起きていると感じ取った俺達は、男の下へと駆け寄る。

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