②採掘場
同じ戦い方を二度、三度と繰り返すと、ついに第一層の最奥へと辿り着いた。
そこは誰かが設置したのか、他の広間よりも多くの魔導ランプが無造作に壁に掛けられており一際明るい空間を作り出していた。
「ようやく着いたか」
思わず背中の鶴橋に手が伸びる。
その姿をショーンは諫める事無く、腰に手を置く。
「そうだ。ここが採掘場だ」
よく見れば、壁のあちこちが不規則に凹んでおり、掘られた穴跡や壁の周囲にクズ石が転がっている。俺は鶴嘴を手に取って壁に顔を近付けるが、色が違う部分が見られるものの、それらが本当に目的の鉱物かを見分ける事が出来なかった。
やむなし。恨めしそうにショーンに視線を送る。
「まぁ、はやる気持ちは分かるが、まずは落ち着こう」
彼は自分の背嚢から水筒と携帯食を両手で取り出した。
その意図を察する。
「マジか」
「マジだ」
目的である鉱石の回収よりも、休憩を優先するショーンの姿に疑問が生まれる。さっさと採掘を済ませて撤退した方が、洞窟にいる時間は少なくて済む。
一方で、これまでの彼の行動にはもっともらしい理由があった。その相反する分かれ目に、俺は自分の鶴橋とショーンの顔を何度も見比べる。
「………文句を言わなくなっただけでも、成長と言うべきか」
彼は肩をすくめて息を吐く。
「恐らく、早く回収して戻った方が危険が少なくて済むと思ったのだろう? 確かにその考えは一理あるし、間違っているかと聞かれれば、何も間違っていない」
「じゃ、じゃぁ!」
間違っていない。失敗続きだった自分の考えが珍しく認められた事に俺は顔を上げてみせたが、ショーンは最後まで聞けといつものように右手を伸ばしていた。
「安全と危険を常に天秤にかける事は、冒険者の基本だ。つまり、今ここで焦って帰る必要性と、休息もなしに帰る事の危険性をしっかりと考えたか? 洞窟に入って何時間が経過した?」
「………二時間弱」
目的のものを目の前にして、興奮していた自分にそこで気付く。そして、そこには顎に指を置いている自分がいた。
「初心者の君が採掘を無事に終えるのに、一時間は見積もってくれ」
「帰りも同じ時間がかかるとして、合計五時間」
馬車の移動を含めれば、どんなに早くても、帰りはさらに二時間後。馬車に乗っている間は安全だが、少なくとも迷宮内の帰り道で安全と言い切れる場所に、思い当たる記憶はない。




