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Lost13 無名の青年が無名で終わる物語  作者: JHST
第二章 初級冒険者、初めて洞窟に潜る
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⑦感情の矛先

「た、助かった」

 冒険者になって、ここまで追い込まれた事があっただろうか。そう思える程に厳しい戦いだった。単独(ソロ)で四匹の大黒蟻を掃討した事など一度もない。

 呼吸を落ち着かせた後、ゆっくりと立ち上がる。まずは落ちていた長剣(ロングソード)を回収し、次に地面に突き刺さったままの鶴橋を引き抜いた。

 そして最後に、ショーンの顔を睨みつけた。

「死にかけたんだが?」

「………悪いが、冒険解説職は助けない。事前に、そう説明を受けていたはずだ」

 相手の反応を予測していたものの、舌打ちが無意識に出る。だが、恐怖と羞恥、勝利の高揚が混ざった感情が俺の行動を限定させてくる。

「俺が死なないよう、助言するのが仕事じゃないのか?」

 何故助けなかったのかという論争では勝ち目がない。俺は早々に、相手の仕事の不備を突く事にした。

 ショーンはすぐに返さず、壁面に体を預けたままこちらを睨んでいる。すべき仕事をしなかったとギルドに報告されれば、奴も困るはず。

 謝罪の一つでも出れば、今後はこちらが優位に立てる。そう計算した。


「確かに、戦闘中に助言する事は出来ただろう。そして、俺は君に助言をしなかった」

「あぁ、その通りだ! だから―――」「仮に俺が助言したら………君は、その通りに動いたか?」

「それは………」

 俺はそれ以上、言葉が出なかった。

「出会った頃から何かと反抗的だった君が、俺の助言を素直に聞いていたか、と聞いている。助言をしても、『集中が削がれるから黙っていろ』などと言うのではないのか?」

 間違いなく言っていた。俺は口を静かに閉じる。

 だが、それを肯定すれば奴の行動が正しかった事を認める事になる。逆に『指示が出ていれば従っていた』と反論すれば、今後その通りに動かざるを得なくなる。

 どちらを答えても、こちらが不利になる。

 ならば、話を変えるしかない。

冒険解説職(チュートリアラ―)には、俺が死なないよう救助者ライフセイバーとして振る舞う役割もあるんじゃないのか?」

「それはつまり、今後、複数の大黒蟻に囲まれた場合、依頼を破棄してでも助けろという認識で良いのかな?」

「ぐっ」

 藪蛇と化した。

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