④依頼開始
「よっしゃ! さぁ、何処を掘ればいい!?」
場所と掘り方さえ教えてくれればそれでいい。俺は、後ろからついて来るショーンに、初めて自分から声を掛けた。
だが彼は首を傾げる。
「一層の採掘地点はもっと奥だな。量と質を求めるなら、もっと下の層になるが………単独ではまだ止めておいた方が良いだろう」
情報を暗記していた彼は、手帳を見るまでもなく即答する。
考えてみれば、入ってすぐに採掘できるならば、わざわざギルドの管轄下になる訳がない。
「わ、分かってるさ。冗談で言ってみただけだ!」
素で知らなかったとは言えず、適当に誤魔化しておく。ならば鶴橋の出番はしばらく来ない。俺は背嚢の横にある紐の中に鶴橋の柄を通し、両手を開けておく。
「戦う前に確認しておきたいんだが」
ショーンが呼び止める。
「大黒蟻との戦闘経験は?」
大黒蟻。
主な出現は洞窟型の迷宮だが、野外でも時折出没する昆虫型の魔物。大きいと名が付く通り、子どもが這いつくばっている程度の大きさをもつ。大人からすれば、それなりの勢いで踏みつけるか、高い所から大きめの石を落とせば倒す事ができる。
だが、昆虫類に共通して、硬い外骨格と強力な顎、そして群れ成しやすい点には注意しなければならない。子どもや女性の細い腕なら易々と嚙み切れる力を持つ為、正面ではなく、側面に回って節を攻撃する事が推奨される。
「経験なら、あるさ」
小さい頃のトラウマが今も尚残るが、既に冒険者としての討伐経験はある。昔のように、怖くて震えるような事にはならない。
「奴らは動きが鈍い。正面の顎を避け、側面からバサリ、さ」
「概ね合っている。では、お手並み拝見といきましょう」
「へっ、偉そうに。まぁ、後ろで見てろって」
最初の広間を抜け、奥の一本道を進むと、次の広間では大黒蟻が徘徊していた。
「………四匹」
複数は初めてだった。




