③アリアス西部の鉱山跡地
「さて、ここがアリアス西部の鉱山跡地だ」
目的地前の広場で馬車から降りる。
鉱山の入口周辺は草木が刈られており、複数の馬車が止まれるよう整備されていた。迷宮として冒険者ギルドの管理下となる前は立派な鉱山として栄え、商魂たくましい商人達が露店を広げて生活品を売り、鉱山から取れた鉱物をその場で買い取っていたが、魔物が鉱山内から出没するようになって迷宮と化してからは、その姿を見る事はなくなった。
「この迷宮では、昆虫類の魔物の素材以外に、鉄鉱石や銅鉱石の鉱物が手に入る。これらを売って装備を徐々に整え、冒険者としての生活基盤を築く人が多い。中には中級まで世話になる冒険者も少なくない」
「ふぅん」
冒険者ならば誰でも知っている情報だが、念の為とショーンが歩きながら解説している。
洞窟の前で入口を見上げた。
「ようやく、ここまで来たぜ」
ここから本当の冒険者生活が始まる。今までの様な薬草取りとはおさらばである。ここで大量の鉱石を集めて金を稼ぐ。そして装備を新調。質の良い宿と旨い食事の毎日が俺を待っている。
「まだ、中にも入ってないけどね」
「あんたは、一々煩いんだよ」
借り物の鶴嘴を肩に背負い、俺達は洞窟の中へと足を踏み入れる。入口には誤侵入を防ぐ衛兵の姿もない。先程同じ馬車だった中年冒険者達は、早々に奥へと入っていった。
「あ、準備運動―――」「いらねぇよ! 子どもじゃないんだから!」
一体俺を何だと思っているのか。
見た目からして、俺よりも冒険者として素人に見えて仕方がない。腰に下げている市販の片手剣とは別に、黒い鞘の剣だけは立派なものだが、目の前の男がそれを十分に扱えるのかすら疑わしい。
「なら今一度、荷物の点検―――」「省略!」
一つ一つに耳を傾けていると、洞窟に入るまで半日はかかりかねない。俺は、彼の意見を全無視して洞窟の中へと進んでいった。
とはいえ、洞窟での依頼は初挑戦。人生においては二度目だが、冒険者としては初めてである。鶴嘴を握る手がやや汗ばみ、歩く毎に光が失われて薄暗くなっていく。足音を含めて様々な音が反響し、冷たい空気が五感を包んでいく。
だが、鉱山時代の名残はしっかりと残っており、通路は木材でしっかりと等間隔で補強され、道中には設置された魔導ランプが空気中のクレーテルを燃料として吸収しているお陰で、半永久的な照明と化している。




