②皆が俺を馬鹿にする
「へ、坊主。お父さんの言う事は聞いておいた方が良いぜ?」
「うるせぇ、こいつは親父じゃねぇ! ほっとけ!」
下品な笑いで揶揄ってくる中年の同業者達。これだから冒険解説職の同伴は面倒くさい。俺は自分でも褒めてやりたいくらいの我慢さを発揮しながら、腰のポシェットに支給品を詰め込んだ。
提案を無視されたショーンは、小さな溜息を鼻から漏らすと荷馬車に背中を預ける。
「冒険者になって約一年。主な成果は薬草の収集と野菜等の収穫、小鬼や害獣の討伐経験はあるものの、臨時のパーティのみ。それ以外に何度かパーティを組むも、何れも人間関係の不和で維持できず。性格は感情的で利己的、冒険者の頂点に立つと周囲に息まいては、宥めようとする先輩冒険者ですら噛みつこうとする茶髪の問題児」
「おい、こら」
小さな古いメモ帳を流すように読み始めるショーンを呼び止めた。
「あれ、違った?」
「違わなく………ってそうじゃねぇ! 雇われた側が、雇用主の情報をペラペラと喋るなって言ってるんだよ!」
一体どこからの情報だと問い詰めると、彼は持っていたメモ帳を静かに閉じる。
「俺が自分で集めた情報だよ。俺は冒険解説職だ。どんな冒険者が依頼してこようとも、相手がどんな人物か把握できるようにしてある」
今まで優男のように柔らかかった男の瞳が、うって変わって自信に満ちた表情になっていた。
一度だけだが、俺は息を飲んでいた。
ショーンが続ける。
「相手の性格も含めて、適切な助言を送る。それが冒険解説職さ。リュウ君、君は聞いて学ぶ事よりも、実際に体験して学ぶタイプのようだ」
「………それは、褒めているのか?」
ショーンは苦笑するだけで、何も答えなかった。
「くそっ!」
埒が明かない。これ以上怒っても仕方なく、俺は遠ざかる風景を眺める事にした。
皆そうだ。
皆、俺を馬鹿にしていく。口では偉そうにしている奴等程、大した事をしていない。
そんな奴等と俺は違う。
そう思う事で、それ以上感情的になる事を抑制する。
鉱山まであと一時間。俺は仮眠を取る事で、無駄な感情を費やさないようにした。




