①余計な世話焼き
アリアスの街を出て、西へと定期馬車に揺られる事、一時間半。
冒険解説職の特典その三。馬車代の半額割を受け、俺は他の冒険者、そして目の前に座る冒険解説職のショーンと共に、目的の鉱山洞窟へと向かっていた。
「あぁ、そうだ。忘れない内にこれも渡しておこう」
ショーンはベルトに通せる穴の開いたポシェットを見せると、中を開いて確認を求めてくる。
「支給用の回復薬だ。右の赤から低級、薄い赤がさらに弱い傷薬、緑が毒消しになっている。鉱山内に毒を扱う魔物はいないが、念の為だ」
「それくらい、子どもでも知ってるって」
今更、薬の説明は不要である。一緒に乗っている同業者からの視線が言葉にせずとも、伝わってくる。それは応援でも心配でもなく、侮蔑という笑いであった。
だが、目の前の男は周囲を気にする事なく説明を続ける。
「使えば清算時に加算される………とは言っても、相場の七割くらいの請求だから、もし自前のを持っていても、支給品を使った方が、金銭的には得なはずさ」
「………それも、分かってる」
自前のポシェットにはまだ空きがある。俺はショーンから中身だけを握り取ると、腰の袋に詰め込もうとした。
「いやいやいや。ちょっと待って」
彼が手を伸ばす。次に体を乗り出すと、ショーンはポシェットに入れようとしていた俺の動きを止めてくる。
「何だよ?」
「同じ場所に回復薬を入れるのは危険だ。袋を落としたり、転倒して一度に失う可能性がある。危険性を分散させる為にも、回復薬は異なる場所に保管した方が良い」
既に右腰に付けているのだから、左腹部の側面または背嚢に保管した方が良いとショーンが説明する。
俺は同乗している冒険者に視線を送るが、全員ポシェットらしき袋は一カ所にしか身に付けていない。
「他の奴等はそうしてないぞ? それに、俺は背嚢一杯に鉱石を詰めて帰るんだ。余計な隙間なんざねぇよ」
今まで一度もポシェットの中身を失った事などないし、回復薬の世話になった事も多くはない。それよりも、鉱石をどれだけ持って帰れるか、その一点が俺にとって重要だった。




