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追放された魔術師に声をかけたら異世界から来たチート級の魔法少女でした。~不撓不屈のオルカ~  作者: 堂道廻
【第五章】ワットウィルビーウィルビー

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第65話☆◆ 可能性のひとつ

 泣きじゃくるシャーリーにロランさんは「もう大丈夫だ」と優しく声を掛けて元気づけます。


 う、羨ましい……。わたしも腰が抜けて立てないフリをすればよかったです。こんなところで魔法少女として生き抜いてきた胆力が無駄に出てしまうとは……、不覚です。

 しかし、そんなわたしの頭の上にピコンと豆電球が点灯しました。


「あ、あの……ロランさん、実は、わ、わたしも脚が震えて……、今にも倒れてしまいそうなんです、けど……」


 よろりとワザとらしくよろめいたわたしは、魔法のステッキで自分を支えてみます。

 そんなわたしの怪しい行動を疑いもせずにロランさんは、「ん? そうか、それじゃあ」とシャーリーをお姫様だっこしたまま腰を屈めて背中を丸めました。


「さあ、背中に」


「え……」


 おんぶー……。


「あ、はい……」


 わたしはロランさんの首に両手を回して体重を預けると彼はふたりを抱えていても難なく立ち上がりました。


 なんか違う……。けれど悪くありません。ロランさんの背中は温かくて大きくて、すごく安心します。


「ふふふっ、……ん?」


 そのとき、わたしは気付いてしまったのです。強張っていた表情を緩めて穏やかになったシャーリーの顔が仄かに紅くなっていることに。


 こ、これは……、まさかとは思いますがまさかなのでしょうか、どうにもこうにも嫌な予感がします。


 確かに若返ったロランさんはいつも以上にイケメンです。美形というよりは男らしく頼りになる姫を守る守護騎士って感じです。

 なによりシャーリーは騎士に助けられることを夢見ていた乙女です……。この状況、万が一、彼女がロランさんに恋をしてしまったら……。いやいや、でも、そんな……、ねぇ?

 

 ロランさんに背負われたまま倉庫の外に出ると、夜空には丸ン丸お月様が眩く輝いていました。


「シャルロット様!」


 名前を呼ばれてうっとりしていたシャーリーがハッと眼を開きます。わたしたちのもとに駆け寄ってきたのはマチルダ様でした。


「マチルダ!」


 ロランさんに支えられながら地面に足を着いたシャーリーはマチルダ様と抱き合います。


「ごめんなさい……、ごめんなさいごめんなさい……」


 何度もマチルダ様の胸に顔を埋めて謝罪するシャーリーに彼女は「いいのです……、あなたが無事に戻られたならそれでいいのです、よかった、よかった……、本当によかった……」と強くシャーリーを抱き寄せました。


「これで一件落着だな」


 わたしをおんぶしたままロランさんが言いました。


「貴殿は……、信じられませんがロラン殿なのですね?」


 金髪のロランさんは返事をする代わりに肩をすくめます。


「どういった魔法を使ったのかは分かりませんが、記憶にあるかつてのあなたの雄姿が鮮明によみがえりました」


「秘密にしといてくれよ」と彼はウインクしました。


「もちろんです。この度は誠に――」


 謝辞を告げようとするマチルダ様に「礼には及ばない」とロランさんが遮り、 


「賊の狙いはあくまで俺だ。この件は俺がシャーリーを巻き込んでしまったようなものだからな。それより早く戻った方がいい、大騒ぎなんだろ?」


「はい、それでは失礼します」


 踵を返したマチルダ様に手を引かれるシャーリーが振り返り、「ロラン様、またお会いできる日を心からお待ちしております……」と涙目で微笑みました。


「ああ、会える日を楽しみにしているよ。元気でな」


 手を挙げて応えるロランさんにぺこりと頭を下げて再び歩き出します。

 彼女たちが帰っていく姿に安堵したわたしの身体は途端に震えはじめました。今度は演技ではありません。震えを止めることができません。

 もしロランさんが助けに来なかったらと考えると――。


「シャーリーが無事に帰っていく姿を見て気が抜けたか? イノリ、よく頑張ったな。さすが《不撓の鯱》のリーダーだ」


 わたしを背負って歩き出したロランさんがいつもの口調で言います。 

 そして、噴水のある広場まで来たところで立ち止まり、わたしを降ろしました。

 

「イノリ、すまないがモニカを呼んできてくれ」


「学園長をですか?」


「このスキルはそれほど長くもたない。無理やり体を若返らせるから、その反動で戻るときに内側から全身がズタズタになるんだ」


 苦笑するロランさんの口角から血が溢れていき、崩れるように倒れていったのです


「ロランさん!? ロランさん!」


 わたしは彼の体を支えるのが精一杯で、名前を呼ぶことしかできませんでした。



◆◆◆



 俺が目覚めたのは自分の部屋のベッドの上だった。

 ベッド横の椅子にモニカが座っていて、呆れたような怒っているような、そんな曖昧な表情で俺を見つめていた。


「モニカ……」


「イノリから聞いたわよ、ずいぶん無茶したわね。今回の戦いでさらに毒の進行が速くなったんじゃないの?」


「ああ……、腕の痺れが強くなったな。だけど、ああするしかなかった。あいつらに一瞬で実力差を見せつけて退かせるには……」


「分かっているけど、分かっているけど……。このままじゃあなたっ!」


 声を上げながらも言葉を呑み込んでモニカは続ける。


「もう時間がないわ。あなたに毒を与えた《原初の迷宮》にいる守護者ガーディアンを倒して、血液から血清を作るしかない。イノリの力があればきっと――」


「前にも言っただろ、あの子を巻き込めない」


「聞いて、あの迷宮を攻略することがもしかしたらあの子のためになるかもしれないの」


「……ゲートか」


「あ、あなた気付いていたの?」


「可能性のひとつとして想定していた」


「そうよ、私たちが目指した黄金郷へ至る扉が、もしも異世界……、イノリの世界に通じるゲートだとすれば三つの目的が同時に達成できる。あなたの治療とイノリの帰還、それからカンナたちの救出を……」









――――――――――――

ここで第五章は終わりです。


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