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追放された魔術師に声をかけたら異世界から来たチート級の魔法少女でした。~不撓不屈のオルカ~  作者: 堂道廻
【第五章】ワットウィルビーウィルビー

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第53話☆ シャーリーの事情 

「ねぇ、イノリ、あれはなんですか?」


 わたしの肩に触れたシャーリーが水面を指差しました。


「あ……、ごめんなさい。馴れ馴れしかったですよね」


 パッと手を離した彼女にわたしは笑顔で頭を振ります。


「ううん、気にしないよ。わたしもシャーリーって呼んでいい?」


「もちろんです。で、でも……その、本当は……」


「本当は?」


「いえ、なんでもありません! ところであれはなんという生き物でしょうか?」


 再び水面を指差しました。

 彼女の細い指の先で小魚が泳いでいます。


「え? えっと、あれは魚だよ。あ、それとも種類の方? わたしも魚の名前は詳しく知らないの」


「さかな? 魚って、こんな形だったのですね」


 シャーリーは、ほぅと息をついて感心しています。


 どういう意味だろう? 生きてる魚を見たことがないのでしょうか。

 

 それからも彼女の質問が尽きることはありませんでした。不思議だったのは誰でも知っているようなことを知らなかったり、逆に地層や天体に詳しかったり、知識のレベルがちぐはぐなことです。


 マチルダ様のお世話そっちのけでわたしと話していて後で怒られないか心配です。ちらりと河原で休むマチルダ様の方を見ると、わたしたちの様子を静観しているようでした。


「イノリはどこの国から来たのですか?」


「え?」


「その黒い髪、すごく綺麗……、これほど綺麗な黒髪を見るのは初めてです」


「……うーん、遠いところから来たんだけどね」


「遠い東にあるという国?」


 彼女の純真な瞳で見つめられると、どういう訳か嘘をつくことに罪悪感を覚えてしまいます。

 なぜか彼女と話していると秘密を隠せないような、天性の魅力というのでしょうか、強力な引力というのでしょうか、人を惹きつける不思議な力があります。


「あのね、信じられないかもしれないけど、わたしはこの世界の人間じゃないんだ」


 わたしはリスクを承知で真実を打ち明けていました。

 ですが、こんな突拍子もない話を信じるはずがありません。

 

「違う世界から来たの?」

 

「実はそうなの。信じられないでしょ?」


「ううん、信じるよ。だってイノリは友達だもの」


 太陽よりも眩しいシャーリーの笑顔に思わず胸がキュンとなりました。


 な、なんでしょうか、この感じ……。女の子同士なのにドキドキしてしまいます。か弱い女子を守ってあげたくなる男子の感情ってこんな感じなのかもしれません……。


「あの子もそうなの?」


 シャーリーは川に仰向けで浮かびながらボケーっと空を見つめるアルカナに視線を送りました。


「さあ、どうなのかな? そういえばアルカナのことってよく知らないかも」


「ふーん。ねぇ、イノリの世界ってどんなところ?」


「魔術はないけど、魔法みたいな物がいっぱいあるよ」


「たとえば?」


「鉄の鳥が人を乗せて空を飛んだりするの」


「鉄の鳥? ホントに!? わたくしもイノリの世界に行けますか?」


「うーん、今はまだ帰る方法が分からないんだ」


「イノリはやっぱり元の世界に帰りたい?」


「帰りたいけど、帰りたくない……。できれば行き来できる方法があれば一番いいな」


「あ、ロラン様がこちらにいるからですね」


「ッ!? えっ!? いや、ちがうよッ!」


「隠す必要はありませんよ、イノリの目を見れば分かります」


「あうあうあうあう……」


「わたくしの結婚相手も年上なのですが……」


「えっ!? もう結婚相手がいるの??」


 シャーリーはこくりとうなずきました。


 おお、政略結婚でしょうか。上級貴族は若くして結婚する方がいるとクラスメイトのアンジェちゃんが話していました。伯爵家の従者ともなれば政略結婚させられてしまうのですね。


「はい、一度だけしか会ったことがありません。歳が倍近く離れているらしくて、顔もなんだかパッとしない人であまり覚えていません。同じおじさんならロランさんみたいにカッコイイ人が良かったです」


 シャーリーが微苦笑を浮かべました。


 現代人のわたしからすれば結婚相手が選べないのは考えられません。

 なんて励ませばいいのか分からずにいると、


「そろそろ出発するぞー!」


 ロランさんが立ち上がって声を上げます。


 それから、わたしたちは学園を案内して、その日の護衛任務を終えました。


 そして翌日も、その次の日もミッションは滞りなく進み、わたしはすっかり仲良くなったシャーリーに会えるのが楽しみになっていました。

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