第21話◆ わたしの名前を呼んで
どうやら目論見どおり、ニナが接触したようだ。
事実を知った彼女は、きっと裏切られた気持ちを抱くだろう……。
俺は胸の奥に感じた疼痛を振り払うように首を振った。
これぐらいの方がいいんだ。
これ以上、彼女と一緒にいるのは彼女にとってよくない。同じ時間を過ごせば過ごすほど、俺が死んだとき彼女に俺の死を背負わせてしまうことになる。
今は裏切られたと思っていても、彼女が大人になれば俺の意図を汲んでくれる日がくる。
これで良かったんだと、心の中でそう呟いた俺がベッドに横になって目を閉じたそのときだった。
ばごんっ!!
突然、壁が崩れて人が通れるほどの大きな穴が開く。
「どわッ!?」
俺はベッド脇に立てかけておいた剣を即座に手にして立ち上がった。
崩れた壁の向こう側に魔法少女に変身したイノリが立っていた。正拳突きのポーズを保ったまま俯き、「どうして……」と消え入りそうな声で呟いた彼女の瞳は涙で潤んでいた。
「イノリ……」
「どうして……なんで! なんで勝手にパーティを解散したんですか!」
憤るイノリを諭すように語りかける。
「嬢ちゃんの力も認められたわけだし、俺の役目は終わったんだ。こんな半端者といるよりあいつらといたほうが活躍できる」
彼女の瞳に灯った憤怒の炎がさらに苛烈に燃え上がる。
「安心しろ、ちゃんと元の世界に戻る方法は俺が見つけてみせる。俺はそっちに専念するためにパーティを解散したんだ」
「そんなこと望んでいません……。それなら一緒に探そうってなんで行ってくれないんですか! それが仲間なんじゃないんですか! 目的を共有して達成するのがパーティなんです! わたしたちはパーティです! わたしたちがテナークス・オルカなんです! 他の誰でもない、わたしたちが! それは! 誰にも! 譲れません!」
一歩、二歩、三歩と詰め寄ってきた彼女が俺を睨み付ける。
以前にもかつての仲間から同じことを言われたことを思い出す。俺がひとりで無茶をしようとしたとき、そいつは俺の胸ぐらを掴んで激怒した。
俺はあらためて悟る。
この揺るぎない想い。これこそが彼女の力の源なのだと、どう足掻いても太刀打ちできないと悟った。
「すまなかった……。俺が悪かった、許してくれ」
「許しません」
「じゃあ、どうしたら許してくれるんだい?」
「……名前を呼んでください」
「は?」
「二度は言いません、言わせたら許しません。それから明日、朝一でギルドに行ってパーティの解散を取り消してください」
「わかったよ、イノリの言う通りにする」
「……ゆ、許します」
「ところでなんで名前を?」
「名前で呼ばれたことがないからです。名前を呼んでくれたのはこれが初めてです」
「あ? そうだったか?」
「そうですよ! いつも嬢ちゃん嬢ちゃんって子供扱いして! 失礼です!」
「す、すまん……。それよりもいいのか? こんなおっさんと一緒で……」
「わたしは! ロランさんがいいんです!」
「は、はい……」
「理由をちゃんと聞かせてください。どうしてこんなことを?」
「俺はただキミにとってベストな状況にいてほしかったんだ」
「わたしのベストはここなんです!」
ここまではっきりと言われたら立つ瀬がない。
「そうか……。イノリが変身したってことは俺は敵と認識されちまったんだな」
「はい、かなり頭に来ていましたから」と彼女は笑顔で言った。
ここで第二章はおしまいです。第二章は今週中には更新できる予定です。
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