表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜  作者: あいみ
新しい家族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/73

家族になりました

 テロイ家の家紋が入った馬車に乗り込む寸前、リミックはリンシエに呼ばれた。

 私はレーゼルに抱っこされたまま先に馬車へと乗り込んだ。


 窓から覗くと何やら深刻な顔をして話していた。


 「お嬢様の体には傷跡一つ見当たりませんでした」

 「ふぅ……。そうか」

 「ということはお嬢様は……」

 「それを確認するためのものでもある。留守は任せたぞ」

 「はい。行ってらっしゃいませ」


 あ、こっち来た。レーゼルの隣に座っては優雅に足を組む。

 さも当然の流れからわかるように、馬車に乗るときの癖なのだろう。

 全員が乗ったところで馬車は出発。


 スピードは出ていない。歩くよりかは速い程度。

 自転車と同じかな?


 で。どこに向かってるの。


 聞きたいけど喋れないからなぁ。

 痛みを感じているわけではないけど、棘が刺さったような違和感はある。

 チクチクとした不快感。


 無理に喋り続ければ声を失うかもという不安。


 走行中、ノルアとティアロが両手を開いて「おいでおいで」としてくるけど、私は猫か!!


 プイっと背中を向けた。


 落ちないようにレーゼルにしがみつく。


 「バカなことをしているから嫌われるんだ。ほら、着いたぞ」


 馬車が停まる。降りた先にあったのは白い建物。神殿のような形。二階建てか。

 隣には全く同じ建物がある。


 「お待ちしておりました。テロイ公爵」

 「急な訪問になってしまい本当にすまなかった」


 到着した私達を見ては、法衣を着た男性が恭しく頭を下げた。

 裾や袖を広めにして優雅さを演出してるみたいだけど、動きずらくない?

 私なら転けるな、絶対。


 ごちゃごちゃとした柄はなくシンプルに白と青の二色。

 清潔感があっていいし、遠くからでも神官であるとわかる。


 ということはやはり、この建物は神殿で合っているということか。


 「ユーリ。怖がることはないわ」


 一人納得していると、初めての場所と見知らぬ人に恐怖していると勘違いさせてしまった。

 ここで否定すればレーゼルに恥をかかせてしまうことになるのでは。


 頑張って笑顔を作ってみたけど、笑えているか私にはわからない。

 何せ今まで一度も表情筋を動かしたことがないからな。

 動いている感覚がない。


 少しずつ、鏡の前で練習すればいいか。


 寝る前に顔のマッサージしてあげるのもいいかも。筋肉がほぐれたら自然と笑顔も増える。


 「「(ユーリが可愛すぎる)」」






 ❁❁❁






 「では、ユーリ様。こちらに立って、手を出して下さい」


 一箇所だけ模様の付いた床。何を表しているのか。

 中央には赤青黄緑茶の五色の丸?かな。

 それを挟むように上下に直線が引かれて、更にその上には金色と下には黒色が描かれていた。


 丸を色分けしているのは何かしらの意味を持つはず。


 レーゼルが降ろしてくれるも、立てない私はその場に尻もちをつく。

 円の中に入ると模様が光る。


 「大丈夫だよ、ユーリ。すぐに終わるから」


 リミックが私の手を取っては、数秒で離れた。


 ──はて?これは何の時間かな。


 その後はレーゼル、ノルア、ティアロの順番で。


 ──ねぇ。何かの儀式?説明がないから流されるままなんだけど。


 私は言われた通りのことをしていればいいだけなので、苦ではない。


 「それでは、次はこちらを」


 神官は手袋をした手でひし形の石を手渡した。

 クリスタルのように綺麗なそれは、握り締めた瞬間に眩い光を放つ。


 思わず離してしまったけど、光は消えないまま。

 動揺しながら神官が拾いあげ、床に描かれた模様と同じものが掘られた箱にしまった。


 蓋を閉めたことにより光も閉じ込められたかのように、もう眩しくはない。


 皆が驚く中で唯一、リミックだけは「やはり」と呟いた。

 私だけに聞こえたのか、周りは聞こえないふりをしているのか。反応はしなかった。

 だから私も。何も言わないことにした。

 悲しげな瞳は閉じられ、次に開いたときにはいつもと同じ。


 ──どうしてそんな表情をしたのか。いつか教えてくれるといいな。


 優しくて温かいワインレッドの瞳を細めて綺麗に笑った。

 ティアロはリミックと同じ色で、ノルアはレーゼルから菫色を受け継いでいる。


 顔立ちや色だけではない。雰囲気が彼らは家族だと物語っていた。


 「ユーリ。これで私達は正真正銘の家族になった」

 「う?」


 新しく家族になる人が円の中に入り、家族一人一人と手を繋ぐことが儀式だったのか。

 最後に石を握るとこまでがセットだったな。


 「テロイ家へようこそ。愛しい娘。歓迎するよ、ユーリ」


 抱きしめてくれる力は強い。でも、優しい。


 もうとっくに諦めていた温もり(かぞく)

 ここにいていいんだよと、言ってくれる。


 笑顔でお礼を言いたいのに涙が滝のように流れて制御がきかない。

 涙腺は緩みまくって嗚咽まで。


 鼻水が垂れないようにすする。目を擦っても涙が止まることはない。


 新しい家族が出来たことに、ただただ喜びが押し寄せてくる。


 暗い部屋に閉じ込められていた苦い記憶は未だ鮮明。忘れるなんて絶対に無理だ。

 消えることなく、いつまでも覚えていることだろう。


 それでも……。


 「ユーリを世界一幸せな娘にすると約束する」


 小さな、ユーリにとっては大きな約束。


 ユーリの幸せが胸をいっぱいにした。愛おしい気持ちが空っぽの心に降り注ぐ。


 私はもう“ななし”ではない。ユーリ・テロイ。

 愛してくれる家族と共に幸せになるんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ