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溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜  作者: あいみ
最上位魔物

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傷は痛いのです

 「き、傷薬!?ユーリ!!どこか怪我をしたのか!!?」


 顔面蒼白になり慌てふためくヴィバル様。

 先程の人魚姫(プリンセス)の攻撃が当たっていたのではと大袈裟なまでに心配してくれる。それこそ、本当の孫みたいに。

 怪我はしていないと伝えると大きなため息をついた。


 「ではどうして、傷薬なんかがいるのだ」

 「あげたい人がいるんです」

 「ふむ……。この店で売っているはずだ」


 屋根の上で白い旗が風に揺れていた。

 あれは薬屋であることを示す。


 扉を開ければベルの音が来客を知らせる。


 念の為にと母様から貰ったお小遣いで貝殻の容器に入った薬を買う。


 浜辺には貝殻が落ちていることがあり、容器として使わせてもらっているのだとか。

 見た目が綺麗で可愛いとよく売れる。使い終わっても飾っておけるしね。


 私がお金を払うと店主は「小さいのに偉いねぇ」と褒めてくれた。


 初めてのお使いに来たと思われている。

 まだ顔色が良くないヴィバル様がすぐ近くにいるので、溺愛されているんだなと微笑ましそうな眼差し。


 溺愛というか、孫の友達だから大切にしてくれているのだ。


 「ユーリ。その薬はどうするんだ?」

 「んとね……」


 答えるよりも先に再び、洞窟へと戻る。


 人魚姫(プリンセス)は開いた口が塞がらない。目をパチパチさせては額を指で抑える。


【何をしに来た……?】


 戸惑う声。


 帰ったはずの人間がその日の内に戻ってきたら、そうなるよね。


 「これあげる!」


 さっき買った傷薬を取り出す。


 人魚姫(プリンセス)の美しい尾が一箇所だけ赤く滲んでいる。

 怪我をしているのだろう。


 治癒魔法をかければいいのだろうけど、魔法を使うと怖がらせてしまうかもしれないから塗り薬を買った。


 少量をすくって患部に塗る。


 「染みない?大丈夫?」

【そんなことをしたって海は元に戻さない!!】

 「違うよ。そのためにあげるんじゃなくて、ただ……。傷は痛いから」


 命あるもの、痛みは伴う。種族に関係なくそうだ。


 最上位魔物で自然から魔力を得られるくらいだ。傷なんてすぐに治ってしまうかもしれない。

 でも、そうじゃないなら?人間と同じように治りが遅かったら、痛みを体に残すことになる。


 「怪我をしている人を放っておくなんて私には出来ないよ。これ、治るまで毎日、塗ってね。ヴィバル様。行きましょう」


 今度こそお別れだ。


 こんなにも美しい海を汚した代償は大きい。私達は現状を受け止めなくてはならなかった。


 「少し早いが昼食にするか?」

 「はい」


 近くのカフェに入った。潮風を感じるテラス席。

 高い椅子に乗せてくれたヴィバル様にお礼を言ってメニューを開いた。


 そうだよね。米類はともかく麺類もないか。


 サンドイッチにパンケーキ。炒め物もあるのか。

 値段が高いとこを見るに、外国のお客さん用のメニュー。ステーキのような豚肉をソースで焼き上げる。


 お金に余裕のある人はたまの贅沢で頼む一品。


 私は量的にも食べきれないのでフルーツだけをもらう。


 ヴィバル様はお肉を注文。若いな。


 運ばれてきたお肉は分厚く、中々に味が濃そう。胃もたれするのではと心配する私をよそに、綺麗に平らげた。


 ──お、おお。すごいな。


 「浮かない顔だな。人魚姫(プリンセス)のことか?」

 「心のどこかでは仲良くなれるかもと期待していたんです」

 「儂もだよ。キングゴブリンを従えたユーリなら或いは……と」

 「従えてません。不可抗力というやつです」


 私が望んだわけではない。あんなことになるなんて、誰にも予想は不可能。


【どうしたのだ、ユーリ。困り事か?】


 頭の中で響くアネモスの声に驚いてフォークを落とす。

 従業員がすぐさま新しいのと取り替えてくれた。


 タイミング!タイミングが悪いよ。外でアネモスと話すわけにもいかない。


 かと言って無視するのもな。


【声を出さずとも心の中で思えば私に届く】


 え、そうなの?


 試しにやってみた。


 「(アネモス、聞こえる?)」

【あぁ。聞こえている】

 「(あのね。人魚姫(プリンセス)って知ってる?)」

【人魚のことか】

 「(そうそう。海は綺麗になったのに、人間を嫌い続ける理由って何だろう?)」

【すまないが地上のことはわかりかねる。私は空の魔物だからな。だが、ゲールに聞いてみてはどうだ?私と違い自然に聖域を持つ者同士、わかることがあるかもしれん】

 「(私から話しかけたらいいの?)」

【そうだ。牙を貰っただろう?】


 貰っ……た?自分で欲したわけではない。

 成り行きで貰ったようなもの。


【それにユーリの魔力を流せば繋がれる】


 今、現在進行形で話をしているけど、アネモスから話しかけてきたよね?

 実は私が話しかけていたのかな。


【ユーリから話しかけるときは、そうしたらいいということだ】


 なるほどなるほど。そういうことか。

 私の早とちりだった。


 繋がっているときは今みたいに色の付いた魔法が手の甲に浮かび上がる。


 溶けたはずのゲールの牙は形を成したまま、確かに私の中にあった。

 不快な感じがないことから、体に害はない。


 「(ゲール。聞こえる?)」

【ユーリか?どうしたんだ】

 「(話しても平気?父様は?)」

【あの人間ならとっくに帰ったぞ。約束通り、商人の魔力も覚えた。連中なら今後、通してやる】

 「(そっか、ありがとう。でね、ゲールは人魚姫(プリンセス)を知ってる?)」

【あぁ、知っている】

 「(どうしてあんなに人間を嫌うのか、知ってたら教えてほしいなって)」


 もちろん、海を汚したのは悪いことだ。自然は誰かの物ではない。人や魔物、生き物が生きていく上で必要不可欠。

 それを人間の身勝手さで汚し荒らした。


 海を聖域とする人魚姫(プリンセス)からしてみれば、自身を傷つけられたのと同じ。


【心当たりはある、が……。ユーリ。そもそも人魚姫(プリンセス)の聖域は海ではない】

 「えっっ!!!??」


 驚きのあまり声が出てしまった。


 食後の紅茶を飲んでいたヴィバル様の手は止まり、目を丸くする。


 ずっと黙り込んでいたのに急に大声を出せば誰だって驚くよね。


 「どうした、大丈夫か?」

 「は、はい。ごめんなさい。大声出しちゃって」


 注目を集めてしまったことにより居づらくなった。

 フルーツを完食してカフェを出た。

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