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溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜  作者: あいみ
最上位魔物

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贈り物に覚えはありません

 「よし。じゃあ今からお城に行こう」


 私を取り囲んでいたゴブリン達はゲールの指示により森のあちこちに解散した。


 各々が好きなことに夢中。


 「ところで、今の言葉は何?」


 ゲールが発したのは人語ではなかった。

 聞き慣れないだけでなく、耳にこびりつく不快感。

 父様がアネモスを呼ぶときの言語とはまた違う。


【魔物語だ。魔物は基本、それしか喋れないからな】

 「特例はいるんだよね?」


 同じく最上位魔物であるアネモス、神獣のブロンテー。彼らも人語を話す。


 というかついさっき。会話をしたばかり。


 ゲールは目を閉じて小さくうなづいた。

 ゴブリンは魔物の中でも知性がなく、言葉を深く理解はしていない。

 本能がゲールに従わせているだけ。こちらから攻撃しなければ大人しい種族でもあり、花を摘むという平和で可愛い趣味を持つ。


 顔が怖いため受け入れられにくいかもしれないけど、私はそうでもない。

 いっとき、流行った……あの、ほら。キモかわいいってやつだ。


 知性が低いからたまにおバカな行動も取るらしい。


【最上位魔物は進化した魔物を指す。俺も元々はただのゴブリンだったが、ある日を境にキングゴブリンへと進化した】


 その“ある日”が気になるけど、今は問わない。優先すべきことがあるからだ。


【本当に行くのか?】


 ゲールは手を繋いだまま、困惑した表情を浮かべていた。深い森の出口を目前にして、一歩踏み出すことをためらっている。


 「だって父様に報告しないと」


 商人には専用の許可証みたいな物を作って、それを提示した人だけが森を抜けられるシステムにするのだ。

 そのためにもゲールには一緒にお城に来てもらわないと。許可証の制作と、その仕組みを父様に説明してもらんだ。


【ユーリ。俺は魔物だ。しかもキングゴブリン】

 「うん。知ってるよ」

【だったら……】

 「大丈夫だよ。ゲールには人間を襲う意志はないでしょ?」

【俺の意志の関係ではなく、人間がどう思うかだ】


 襲わなかったら大丈夫だと思うんだけどな。

 確かに、ゲールの意志がどうであろうと、人間が恐れればそれで終わりだ。けれど、私は知っている。ゲールは本当に優しい心を持っていることを。


【はぁ、全く。ユーリのような人間は初めてだ】


 ゲールは少し呆れたように言い、繋いでいた手を離された。熱が冷めるよりも先に私の小さな手を包み込む。

 七色の光が渦を巻くようにゲールを包み込んだ。光が弾け飛ぶと、目の前にいたのはかつてのゴブリンではなく、高身長で端正な顔立ちのイケメンだった。


 緑色の髪に黄土色の瞳、尖った耳は残っているものの人間に非常に近い姿だ。

 閉ざされた目はそのまま。

 茶色を主体とした服。ズボンも履いている。

 全身に布を纏うのはこれまでと勝手が違うらしく、やたと服を触る。

 棍棒は剣となり腰に指さっていた。


 「ゲールは変身出来るんだね」


 この能力が魔法ではないとすれば、最上位魔物だけの特権。

 アネモスだって小さくなっていたし、きっとそうだ!


【いいや。これはユーリからの贈り物だ】


 違うと指摘されただけではなく、理解し難いことを言われた。

 ほう?贈り物とな?

 あげた覚えはない。ましてや人の姿なんて。


 首を傾げると体も一緒に傾いて倒れそうになった。何とか踏ん張ったのでギリギリセーフ。


 これで転倒していたら気まづい空気が流れるところだった。


【人間に体の一部を渡した魔物は、人間から一つだけお返しを貰えるんだ】

 「う、うん?え、お返しっていうのは何でもいいの?」

【あぁ。過度な物、寿命や魔法とかじゃなければ】

 「つまり、ゲールが人間の姿になったのは私がそれを望んでいたから?」

【いや。今回のお返しは俺が決めた】


 情報量が多すぎるとはいえ理解した。


 お返しというのは私が決めても、ゲールが欲した物でも、どちらでもいいようだ。

 過度の範囲がわからないけど、大前提として命に関わることは得られない。魔法もその人間を象徴するものなので右に同じ。


 人間(かり)の姿は自らの意志で切り替われるらしく、街に行くときはこれで困らない。


 ゲールは自分がゴブリンであることを気にしていた。

 人間を襲うつもりがなかったとしても、人間は魔物を恐れる。

 魔物と手を繋いでいる私も白い目で見られるかもしれない。


 そうか。ゲール自身ではなく私のために、その姿になってくれたんだ。


 ということはあれか。アネモスが小さくなって私のベッドにいたのはお返しで得た姿。


 父様の反応を思い出すと、お返しのことは知らないのだろう。


 「ありがとう、ゲール」

【ユーリは俺の主だ。気にかけるのは当然のこと】

 「でもさ。何でその姿?」

【これは俺が初めて見た人間の姿だ。違う種族との出会いはより記憶に残るからな】

 「へぇー、そういうものか」


 納得しかけると、ある疑問が浮かぶ。


 「本当にそれでいいの?お返し」


 魔物の寿命は魔力だと教えられた。ゲールの命が天に還らないためにも、魔力の譲渡が必要なのではないだろうか?


 アネモスやブロンテーはそういう契約をしている。


 「魔力あげるよ!コントロールはまだ下手くそだけど、好きなだけ吸い取っていいからね」

【ユーリ。自然を聖域に持つ最上位魔物は、その自然から魔力を少しずつ貰っているから死ぬことはない】

 「…………アネ……ホワイトドラゴンは魔力貰ってるよ?」

【あぁ。聖域はあくまでも地上にのみ存在するもので、あやつの住む空には魔力は存在しない】

 「そうなんだ」


 アネモスも地上に聖域を持てばいいとか、簡単なことではない。


 最上位魔物は一個体の魔物が進化した存在。言うなれば特異。

 そして、進化した場所が聖域となる。


 翼を持つアネモスは空の上で進化を遂げてしまったために、自然の魔力を得るために地上に聖域は作れない。

 巨大な力を駆使すれば或いは……。


 そんなことをしたら地上は壊滅的被害に遭うため、初代テロイ当主と出会うまでは死を待つだけの日々。


 進化さえしなければ今も好きな場所を好きなだけ飛んでいられただろうに。


【それと。ホワイトドラゴンの真名は口にして大丈夫だ。魔物同士で魂は縛れない】

 「そっか。私の知らないことがまだまだいっぱいあるんだね」

【ユーリの知らないことは、これから俺が教えていく。それでは嫌か?】

 「ううん!嫌じゃないよ!嬉しい!!」


 目を細めて笑った。イケメンの微笑みは破壊力抜群。中身が魔物だなんて誰も信じないだろう。

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