ユーリは大天才!!なのです
王宮に出向き、なぜかアネモスとブロンテーから羽根と鱗を貰ってから喉の調子が良くなった。
夕食後の恒例。談話室で各々が好きなことをする。
私は絵本を読む。兎と犬が仲良くなり一緒に暮らす内容。
ほとんど噛むこともなくなったし、これまでのことが嘘のように言葉が出る。
最上位の魔物と神獣のおかげかな?
もしそうなら、お礼をしないとね。
命を天に還さないためにも一番喜んでくれるのは魔力なんだろけど。
その役目は契約者であるお父様や王様が担う。勝手なことをするとまた、とんでもないことになるので無難なお礼にしたい。
食事も摂る必要がないので、食べ物以外となると……うん。魔力しか思い付かないな。
「二人は幸せに暮らしたのです。おしまい」
喋ることに違和感がなくなり、絵本をスラスラ読める。一冊を読み切り、家族から褒められるとドキドキしていたのに、ただただ驚きと困惑に飲み込まれていた。
「ユーリは文字が読めるのか?」
ティアロお兄様は感心しながらも瞬きの回数が異常に多い。
他の家族も同様。
そうか。私はずっと部屋に閉じ込められていた。人と触れ合うことさえなく、ならば当然。読み書きが出来るはずもない。
みんなは私が絵を見て楽しんでいると思っていたのだろう。
絵本は字が読めない子供のために、絵だけでストーリーがわかるように描かれている。
兎も犬も可愛くて、まさに子供向け。
私は普通に文字を追いながら絵も一緒に楽しんでいた。
元いた世界とは言語が異なるのに当たり前のように読めていたので、特に何も思うことがなかったのだ。
よくよく冷静になって考えてみると、文字を読めるなんておかしい。
言語理解が異世界転生の特典だとしたら納得はいくけど、それは私だけ。家族からしてみれば不可解でしかない。
気味が悪いと……思われてしまっただろうか。
誰も喋ろうとしない沈黙に不安が募る。絵本をギュッと胸に抱きしめた。
普通ではない。これではまるで異端者。いいや、異常者だ。
「ユーリは天才だな!!」
ノルアお兄様が私を抱き上げてその場でクルクルと回った。
かなりの勢いとスピード。
──た、高い。目が回る。
ダウン寸前でお父様が救出してくれた。
頭の中がぐわんぐわんして脳みそがシェイクされた気分。
吐きそうなくらいに気持ち悪い。
カーペットの上に寝転がって、心臓が飛び出そうなくらい高鳴るの動悸が鎮まるのを待つ。
大きな深呼吸を繰り返せば、段々と落ち着きを取り戻す。
絶叫系が苦手な私にとって今のアトラクションは大袈裟ではなく本当に恐怖。
子供だからこそ恐怖心を全面に押し出せる。
「ユ、ユーリ?ごめんな」
ノルアお兄様は基本、冷静でお手本にすべき貴族である。
でも、たまに。ティアロお兄様みたいな行動を取るときもあって。
本人に悪気がないのは百も承知。
私のことを褒めてくれたのだから。
──だけど。
無闇に同じことを繰り返して欲しくないから、反省はしてもらいたい。
プイっと背を向けた。そのままゴロゴロと転がってお母様の膝にしがみつく。
ボサボサになった髪を手早く直してくれた。
「これで世界一可愛いユーリに元通り」
「お母様は、きれー!!」
「どうしましょう、リミック。私、今日はユーリと二人で寝たい気分だわ」
「構わないよ。私は自分の部屋で寝るから」
貴族の夫婦は面白いもので。夫婦で寝る主寝室があり、それぞれの自室にもベッドがある。
とっくに愛が冷めきった夫婦は別々に寝るためにか。なるほど。
こんな大きな子供が二人もいるのに未だ一緒に寝ている両親の愛は本物。昼間に会えない時間を埋めるように二人きりの時間を大切にする。
ラブラブだな。お熱いことで。
「ユーリ。今日はお母様と寝ましょうね」
「あい!」
もう噛むのにも慣れた。全く噛まないわけでもないので、恥ずかしがることもないのだ。だって仕方ないことだし。
それに意味は伝わっているので問題はない。
表情筋も毎日のようにマッサージしていると自然に動くようになり、今では笑顔が増えた。
鏡を見なくてもわかる。私は笑顔を作れるようになった。
「ユーリ。お兄様とは寝ないのか?」
いじけながら私のほっぺたをつんつんしてくる。
途中から面白がってるし。
「やっ!!」
お母様にしがみついた。身を守るために。
ガーン!とショックを受けるティアロお兄様に呆れるお父様と、クスクス笑うお母様。
未だしょんぼり中のノルアお兄様。
私は家族が好きだ。大好きだ。
溢れんばかりの愛をくれる家族に、私もまた沢山の愛を返したい。
「さ、今日はもう寝ましょう。貴方達も。明日は早いんだから」
「そうだな。おやすみ、ユーリ」
我が家の寝る前のルール。私にキスをすること。
唇じゃなくてほっぺたにね!!
海外のホームドラマでよく見るあれ!家族愛の証!!
「おやすみなさい。お父様。お兄様」
ルールその二。これに関しては私だけ。家族が幸せな夢を視られるように祈る。
優里のときから、両親と祖父祖母にも同じことをしていた。
毎朝、「良い夢を視た」と笑顔で言ってくれるのが嬉しかったけど、夢を視ない日だってあったはず。
私のために優しい嘘をついてくれた家族が、ずっと幸せに生きていけるように祈り願う日々。
世界は変われど、それは変わらない。
優しい人達に多くの幸せが降り注いでくれるように、私は今日も願う。




