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女教皇《ハイプリエステス》その4

帰路についた俺はこれからの予定を考えていた。


そーいや千夏の親父さんに呼ばれてたっけか。

・・あー、でも買い物しねーともう家の冷蔵庫は空っぽだったし。

つか、なんか疲れたし。


んー、面倒くさい。


あ、でも晩飯食わしてもらえるかもしんねーしなー・・・。


・・・よし、行こう。

千夏のメシが食えるかもしれないし。

つかもうダメだ。頭の中に千夏の料理のビジョンが浮かんでしまった。

もう俺の腹がその気になってる。


とりあえず親父さんのジムに行くために道を変え、近道のために公園を通るルートを選ぶ。

公園っていっても遊具はなくベンチと広場だけのものだが。


今歩いている道をひょいと右折して真っ直ぐ行くと公園が見える。

公園の入り口に行くのが面倒なので公園を囲んでいる低い柵を飛び越える。


飛び越えた先に今日半日探していた顔があった。


「・・・・・。」


「こんばんわ、永妙寺君。こんなところで会うなんて奇遇だね。」


会長がベンチに座っていた。


「・・・・本当に偶然ならいいんですけどね。」

もちろんそんなわけはないだろう。

どうやら相手は俺のことを調べ終わったらしい。

十分に俺のことがわかったからこそ会いに来たのだろう。


「偶然だってば。」

にっこりと笑ってそう嘯く会長さん。


「こういうときはなんてセリフが合うのだろうね?

この出会いは運命だ、とでも言えばかっこいいかな?西尾維新読んでる?」



「いやぁ、すいませんね、ちょっとわかんねーですわ。」

俺は会長に変な動きがないか警戒しながら答える。

俺のことを調べたのなら当然あの事件も知ってるはずだ。

あのちょっと尋常じゃない事件を。


ということはだ。

こいつは俺の『アレ』に気がついてるはずだ。

いや、気がついたのは今朝だろうが、『なにかしらの力』を持ってることを勘違いなんかではないと確信してるはずだ。



人に知られたのは初めてだが・・・、こいつの目的はなんだ?

俺と同じように恐らく『力』を持つこいつの目的がわかるまでは警戒を解くわけにはいかない。


「まあまあ、偶然出会えたんだ。これも何かの縁だと思って少し僕とお話しないかい?」

座っているベンチの自分のとなりをポンポンと手で叩きながら言う。


「あー、そうしたいのはやまやまなんですがそうもいかない。先約が入っていましてね。」

俺もこいつには聞きたいことがあるが今はまずい。

俺はこいつのことを本当に何も知らない。

何も知らないというのはこいつが俺に与える情報がどういうものか判断する術が何もないということだ。


今の俺はなにを言われてもそれを信じるしかない立場にいる。

そんな状態では話したくても話せないってもんだぜ。


「今から人と会う約束があるんで失礼しますね会長。」

ささっとそう告げてここから立ち去ろうとする。


そんな俺に会長は後ろから声を掛けてくる。


「まぁ待ちなよ、そんなに急いでどうするんだい?どうせ君は『ここから出られない』んだ。約束もクソもないだろう?」


その瞬間俺は何かに正面からぶつかった。

しかし目の前にはなにもない。


両手を前に伸ばすと空中にさわれてしまった。

その見えない何かを手探ってみる。

どうやら壁みたいなものがあるみたいだ。


「なんなんですか、これ?」


振り返って会長に尋ねる。

会長はいつの間にかベンチから立ち上がりおれの背後1.5メートルぐらいまで近づいてきていた。


「もう察しはついているんだろう?君が持ってるであろう能力に似たものだよ。」


やっとお話する気になってくれたね、と微笑む生徒会長。

対する俺は苦々しい表情。


「・・・あんたの目的はなんなんだよ?」


「それはまぁ、いろいろあるよ?いろいろ。でもまぁ、とりあえず知りたいのは君の能力はいったい何で、どれくらい使いこなせているかって所かな。この力はちゃんと掌握してないと危険なものだからね。」


「答えたくないな。それに余計なお世話だ。」


「どうしても?」


「どうしても、だ。あんた胡散臭すぎんだよ。」


「ずいぶんと嫌われたものだな。」

やれやれ、と頭を振る会長。


「教えてくれないとここから出してあげないよ?」


「だとしても嫌だね。あんたが俺をここから出さないってなら朝まで付き合うさ。」

日が暮れ、夜の時間帯ゆえか人が通りかからないが、朝まで待てばいくらなんでも人が来る。

そうなりゃいくらでも助けを求められる。

警察でも呼んでもらえばこいつも引くしかねーだろ。


幸い俺は一人暮らしだ。

心配するような奴もいない。


「暇つぶしの話し相手もいるしな。」

断固拒否の構えの俺。


だがそんな俺の態度を無視して会長は続ける。


「・・・そんなことしなくたって僕を君の能力でボコってしまえばいいじゃないか。僕を屈服させるなり失神させるなりすれば出ていけますよ?それとも攻撃するのには向かない能力なのかな?」


「・・・・・・。」


「いや、君に限ってそれはないはずだ。中学時代の君がそれを証明している。」


「なんだ、それは知っていたのか?」


「今朝までは知らなかったよ。でも今は知っている。・・・・なぁ、僕は君の力が見たいだけなんだ、少なくとも今のところは。見せてはくれないか?」


「断る。見せる理由がない。いいからほっとけよ、俺はあんたをほっとくからさ、会長。」


俺がそういうと会長は一瞬キョトンとして、また笑い出した。


「なぁんだ、言い訳が欲しかったのか?」

そう言いながら癪に障る笑い声をあげる。


「ずるい、それはずるいよ。・・でもまぁ、そういうことか。」


「チッ、ムカつくなぁ。あんた・・・なにがわかったっていうんだ?」

言った瞬間に後悔する。


あまりにイラついて思わず噛み付いてしまったがこの展開はまずい。


何を言われてもあしらってごまかすつもりだったのに自ら話しを進めてしまった。

飛んで火に入る夏の虫ってやつだ。


「君は僕が嫌いなんじゃない。他人と関わりを持つことが基本的に嫌いなんだ。そうだろ?」


小馬鹿にするようにそう続ける会長。


まずい、まずい、まずい!

まずいとわかっているのに血が頭に上ってくる!


「そりゃこんだけ煽っても手を出してこないはずだ。そんな積極的な関わりはもちたくないもんなぁ?『恨み』や『遺恨』は世界で2番目に強い絆だもんな?そうか、ならしょうがない、僕が君に『大義名分』を与えてやるよ!」


そう言い放ち、そこで会長は一呼吸置く。


俺は聞かないほうがいいと直感しながらも場の空気に耐えられずに尋ねてしまった。

「・・・大義名分って・・なんだよ?」


心底可笑しそうに会長は笑いながらたった一言。


「なんでここに僕が居るのかな?」

そう言った。


それだけで俺は我慢をやめさせられてしまった。



「っ・・・!!・・・そうかい、・・・・いいぜ見せてやるよ俺の力を。お前が最後まで立ってられればな・・。」



ああ・・・、もう止まらない。


止まる気もさらさらない。



「お前をボコってやるよ。」


「お願いしますよ、隼人君。」



夕闇の時間が過ぎ、黒が濃くなった公園で、俺は無表情に。会長は笑顔で。

そんな会話を交わしていた・・・・。




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