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女教皇《ハイプリエステス》その3

俺、永妙寺 隼人は立ち尽くしていた。


「クソッ!いったいなんだってんだ!?」


瞬間愕然としていた俺は反射的に走り出す。

そこに留まり続けていることはできなかった。


ひたすらに、現実から逃れるように、ただ、ひたすらに走る、走る、走る。


必死に駆け抜けながらチラリと横目で右を見ると再び血の気が引いていく。

まだ居やがるのか!?まだ振り切れないのか!?


目の前に壁が迫ってくる。

俺は足を止めざるを得なくなり、疾走を止めた。


「じゅ・・・十四秒・・・だと?」


そう一人呟きながら振り返ると、そこには無数の本棚が並んでいた。


「ありえなくね?」


顔しかわかっていないのだから写真を見るしかないとの結論を出した俺は、現在資料室に訪れていた。


ここには全生徒の顔写真付きの学生名簿があるから・・・なんだが。


「広すぎじゃね?」


この学校に来て初めて訪れた資料室は一言で言えば圧巻の一言だった。

なんといってもまず広い。広すぎる。


あまりに広いんで試しに全力疾走したところ端から端までで14秒もかかった。


ちなみに高校生の100メートル走の平均タイムは約13秒程らしい。

自分のタイムはどれくらいだったかいまいち覚えていないが、この部屋は一辺おおよそ100メートルはあるということだ。


どうしてこんなに広大な資料室かといえば、この学校は9年前に少子化の煽りを受け、ここら一帯の学校全てが合併されたからである。


小学校から高校までをいっしょくたにしてしまったために、今この学校の総生徒数は9000人を超える超マンモス校になってしまっているのである。


「ここから探すのかよ・・・」


どうやらせっかく早く終わった半日は無駄になってしまうようだった。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






・・・・とっくの昔に最終下校時刻の放送がなりとっぷりと日が暮れた頃、俺は完全に諦めていた。


なんにしたって多すぎる。

高3生は1000人以上、男子だけで650人もこの学校には在籍していた。


しかもよくよく考えてみれば俺は正確にアイツの顔を覚えてはいなかった。


考えてもみればそれも当然だろう。

たった一度会っただけの人間の似顔絵を描ける人間なんていないのだ。


よく個人情報を守るためといって目線を入れて写真をだしてりするが、その程度で人は人を判別できなくなるのだ。


記憶を頼りに何人かピックアップしていってたが、15人を超えたあたりでもう半ば諦め、ただ惰性で資料をめくっていた。


人間の記憶力なんてあてにならないもんだなぁ・・・とか思ってみたり。



「さて、いい加減帰るか。」

日が沈むのを契機に俺は作業を止め、資料を本棚に片付ける。



扉を開けて資料室から出ると、そこに荒さんがいた。



「あ、どもっす。」

などと、思わずなんの意味も持たないような挨拶をしてしまう俺。


「・・・なんだ隼人君、・・・まだ残っていたのか。」

「はい、少し調べ物をしてまして・・・、もう帰るところですけど。」

「・・・ふーん、・・・隼人君。もしまだ時間があるなら少し教室まで付き合ってはくれないかな?」

「はい、別にいいッス。ちょうど鞄を取りに行くところでしたし。」


俺と荒さんは二人で並んで廊下を歩く。


「教室で何をするんですか?」

俺は尋ねる。


「・・・ああ、机を一つ運び出して欲しいんだよ。」

「え?」

「・・今日のホームルームのときに一つ空いていた席があっただろう?」


ああ、そういえば確かに空いていた席があった気がする。

なんとなくだけど。


「って、どういうことですかそれ?」

欠席とかではないのか?


「・・あぁ、うん、生徒には・・・少し言えない。」


「?」

単に数を間違えたとかいうわけではないのか?


「・・まぁ気にしなくていいよ。隼人君には関係ないから。」



それ以上荒さんはそのことについてはなにも語らなかった。


俺と荒さんは体育館そばの倉庫まで机を運び(といっても机と椅子を運んだのは俺で、荒さんは俺の鞄すら持ってくれなかった。くそ。)そこで別れることになった。



別れ際に荒さんは笑って言った。


「・・・ふふ、それにしても隼人君が僕にそんな風に敬語で話すようになるとはね。」


「何言ってんだ、あんたの『教育』のたまものだろーがよ。」

俺は憮然とした顔で答える。


「おやおや、せっかく綺麗な言葉を使っていたんだ、最後まで続けなさい。」


俺は深く息を吸い、ゆっくりとため息をつく。

「はぁ・・、それでは荒木先生、僕はこれで失礼します。」

「はい、さようなら。」


荒さんは笑って俺に言った。




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