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布団殺人事件

作者: 牧田紗矢乃

 布団が殺された。

 第一報がもたらされたのは、夕飯の後。

 何をするでもなくダラダラとスマホをいじっていた時だった。


 布団というのは私のクラスの担任のあだ名だ。

 クラスメイトの一人が国語の教科書に載っていた田山花袋という文豪に似ていると言い出してからそう呼ばれている。

 とはいえ、私のクラスの担任は顔が似ているだけのゴツいおじさんだ。


 布団は柔道部の顧問であり、黒帯を持っているという話も聞いた。

 そんな人間がやすやすと殺されるなんてことがありえるのだろうか。

 何かの冗談だろうと思ったのは私だけではなかったらしく、他のクラスメイトたちの反応も希薄だった。


 そんなさなか、クラスチャットに一枚の写真が投稿される。

 道路にうつ伏せになった布団と、その下に広がる黒いシミ。

 暗くて見づらいが、血だまりのようだ。

 写真が共有された瞬間、チャットの雰囲気が変わった。


「マジかよ」

「お前が殺したんじゃないだろうな?」

「明日休みかな?」


 みんな思い思いのことを書き込み始め、途端に流れが速くなる。


「探偵オタクなら犯人わかるんじゃね?」


 クラスメイトの一人の発言により、全員の注目が私に集まった。


 あだ名の通り、私は「探偵オタク」だ。

 推理することが好きなのではない。

 推理をする人物が好きなオタクだ。

 そこを履き違えられては困るのだが……。


 話した方が早いので私と現場にいるクラスメイトを含める数人がボイスチャットへ移動し、詳しい状況を調べることになった。


「死体を見付けた時の状況は?」

『ダンス部の練習が終わって、ウチが一人で鍵返しに行った。バスの時間ギリだったからみんな走って帰ったけど、ウチが玄関に着いた時に門のとこ走ってくバスが見えて……』

「一人だけバスを逃した?」

『うん』


 つまり、第一発見者は彼女一人だったわけだ。

 この時間帯のバスは、一時間に一本しか走っていない。


『仕方ないから電話して親呼んで、その間コンビニで時間潰そうと思って歩いてたら、西門の近くで誰か倒れてた。近付いたら布団だった』

「犯人は現場に戻ってくるって言うけど、誰かと会った?」


 返ってきた答えはNO。

 すると、他のクラスメイトたちが「やっぱりお前が犯人か」と騒ぎ始めた。


『ちがうちがう! ぜーったい違うから!!』


 彼女は全力で否定するが、クラスメイトの好奇の目はその程度では消えてくれない。


「ちなみに、さっきの写真で布団が手に持っているのは何?」


 私が指摘すると、他に気付いている人間がいなかったのか「すげえ」の三文字がチャットに並ぶ。

 しかし、クラスメイトが答える前にけたたましいサイレンが私たちの会話を遮った。

 どうやら、彼女が呼んだ警察が到着したらしい。


「警察も来たみたいだし、あとはプロに任せましょうか」


 そう言って私はボイスチャットから抜け、それに続いて他のクラスメイトたちも次々に退室して行った。

 それからもクラスメイトたちはチャットで盛り上がっていたようだが、私にはやらなければいけないことがあった。


 布団の死体が握っていたもの。

 あれは戦国を舞台にしたとあるアニメのグッズで、「天下無双」と書いてあるミニタオルだ。

 そこまで話を進められていたら、そのアニメが大好きでいつもグッズを持ち歩いている子を犯人とした推理を組み立てる予定だったのに。


 このままではきっと、目ざとい読者諸君には簡単に犯人がわかってしまう。

 どうにかして、ミスリードする方法を考えなければ。

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