8.マーガレットとダッシュの今後
「ダッシュ、私がダンスに誘ったのに深い意味なんかないんだからねっ」
「わかってるよ、酒が飲めなくて、食事も思う存分楽しめないからダンスってわけだろ?」
「そう、そうなのよ!」
ダッシュがちょっと残念そうに見えるのは気のせいでしょ。照明の影響じゃないかなぁ?
「さっきブライアン公爵夫人に教えてもらって、驚いたわ。ダッシュが婚約者って。ないない!だってダッシュはこの国の王子様。
侯爵とはいえ、ダイズ侯爵に降嫁みたいに婿入りしないとダメなんだよ?爵位なしで臣下に下るなんてないでしょ?」
「俺は第3王子だし。それもアリだなぁと思った」
ダッシュは酔ってるの?
「あと、ダッシュは私の保護者でしょう?保護者と結婚ってなんかな~」
「ああ、あの時はマーガレットが可愛く成長するのを見越しての下心込みでの発言だ」
ダッシュは何を言い出す?
「最近はダイズ領の領地経営もなかなか面白いと思ってるところだし、いいかなー?と思った」
「陛下的にどうなの?」
「兄上達は元気だし、俺は放任されてるからいいんじゃない?男爵のところに婿入りとかなら難色かもしれないけど、マーガレットは侯爵だし」
なんか疲れた。いっぱい踊ったからかなぁ?
「なんか疲れたからこの話はまた明日にしましょ?おやすみなさ~い」
「おいコラ、ここはまだ家じゃねーぞ?仕方ないな」
後から聞いた話によると、私はお姫様抱っこで帰宅したそうです。そのまま自室のベッドへ。
起きてびっくり。
やってしまった……。私は別にお酒に酔っていたわけでもないのに、ブライアン公爵家でダッシュと会話をしながら、眠くなったという理由で余所の家で眠りについてしまった……。
でも、ここっていつもの私の部屋よね?
「起きたかマーガレット。お前なぁ、酔っぱらいじゃないんだから、突然入眠宣言をして眠るか?仕方ないから俺がここまで運んだ」
「はい、ダッシュ様がお嬢様をお姫様抱っこでお帰りになられまして、今いる侍女達になんとか着替えさせて、眠って頂きました」
うん、執事のキルが言うんだからそうなんだろう。
「で、今後だが。今はマーガレットは確か16才だったか?18才くらいになったら、俺と結婚してくれませんか?生活はこのまま変わらない。俺はマーガレットのサポートだ」
「王子が軽々しく決めちゃっていいの?」
「まあ、うちの親は俺に対して放任だからいいだろう。ま、しばらくはマーガレットは俺の婚約者だな」
はぁ、それこそダッシュな展開。
執事のキルは目に涙を浮かべて喜んでいる。
「お嬢様にこのような立派な殿方が……。感無量です。お亡くなりになった奥様もお喜びでしょう」
お母様の事を言われると私も弱いなぁ。
「うーん、わかったわよ。18才までは婚約者ね?まぁ、正直なところダッシュも婚約話がたくさん来て面倒そうだし?」
「よし、決まりな。親父にも一応報告しておく。これでも王家の影がついてるからなぁ。俺のことは逐一報告されてるんだろうけど……」
王家の影とは?
「お嬢様、王家の影というのはですね。王家の人間の護衛、等を影から行う者の事を言うんです。表には顔を出さないのが彼らのルールのようで…。諜報活動などもいたします。主にそっちかと。不穏分子は予め、まぁ、排除してしまうんですね」
王家こわ~。
ダッシュな展開……。王子が侯爵家に降嫁(?)ってアリなの?