7.夜会当日
「耳が重い」
「イヤリングをつけてるからな」
「しっかしまぁ、なかなかそのラインのドレスを着る女性はいないぞ」
「私は仕立て屋さんにお任せだったからなぁ」
「招待状はお持ちですか?」
失礼な!
「はい、このように」
「どうぞ、夜会をお楽しみください」
楽しめって言われてもお酒を飲める年齢でもないし、食事しまくったらこのドレス……絶対ポッコリお腹が出る!ダンス?ダンスなの?
「ほら、新しくダイズ侯爵になった方よ。パートナーの男性素敵♡」
「前のダイズ侯爵夫人よりもよっぽど知識も教養もありそうね」
などと言われているとはつゆ知らずに私達はブライアン公爵様にご挨拶に行った。
「この度は、ご招待有難うございます。新しく侯爵位をいただきましたマーガレット=ダイズと申します。以後お見知りおきを」
「ふんっ、女の分際で侯爵を名乗っているのか虫唾が走る」
イマドキ女性蔑視とはまた古い思想の持主。
「ああっ、貴方はこのような場所にいるべきお方ではないのに!」
「今日は貴殿が虫唾が走った侯爵のパートナーを務めている。何か?」
「……」
危うく拳の一つでもお見舞いしそうだったが、ダッシュの言葉でちょっと落ち着いた。
ブライアン公爵様とは頭の固い方というように記憶しておこう。
「あらあら、可愛い侯爵様。私は優秀な方なら大歓迎よ。主人は頭が固すぎるのよ。昔気質っていうのかしら?あら?そして、パートナーは第3王子?お久しぶりでございます」
「私は今はこの侯爵の保護者でパートナーのダッシュという名で来ている故、そのようにかたくならないでほしい」
「了解しましたわ。うふふ、可愛らしい。さぞかし優秀なんでしょうね」
ハードルがガンガン上がっていくのは気のせいだろうか?
夜会名物(?)のダンスタイムとなった。
まず最初は主催者の公爵様夫妻が……しかし、どうにも下手だと思うのは気のせいだろうか?誰も口に出さないけど。
続いて、高位貴族なので私達もダンスホールへと出ていった。
「誰?あの方」
「男性?女性?どっち?」
「両方!」
私達は周囲の視線を釘づけにしていたようだ。それはまあ、冒険者として運動神経は必要だし、この3か月練習したからね。
私がマーメイドラインのドレスを着ているのも相まって、私達の事はほぼバレバレになった。
私がかつて家出をした、マーガレット=ダイズで、侯爵家のあまりの惨状に急遽侯爵を譲渡され、現在は女侯爵として生活している事。家出中は冒険者をしていたこと。冒険者としてのランクはCだということまで。
貴族の情報網ってコワイ!
対して、ダッシュについては謎の美丈夫。侯爵が冒険者をしている時に出会った。くらいしか情報が漏れていなかった。
王家の情報保護能力もスゴイ!
「私さぁ、お酒は飲めないし、このドレスじゃ、たらふく食事もできないのよ。出来るのはダンスくらいだから、このまま付き合ってくれない?」
と、気軽にダッシュを誘ってしまった。ダッシュは目を丸くしたが、
「いいよ、お姫様」
と言って、付き合ってくれた。
結局4曲くらい続けて踊ったのかなぁ?二人とも体力あるから。
「マーガレット侯爵ってば可愛い顔して大胆なんだから!」
と、ブライアン公爵夫人に言われた。何のこと??
「同じ相手と4曲も続けて踊るなんて、相手が婚約者です!って周りに言ってるようなものよ?」
え~~~!!
「私……そんなの知らなくて、ただお酒飲めないし、食事もそんなにできないからって軽い気持ちで誘ったんだけど……」
「あらあら、マーガレットちゃんから誘ったの?おそらくジェシー王子は知ってるわよ?知っててマーガレットちゃんのお誘いにのったのよ~」
ダッシュ、マジかよ?こっちはけっこう心臓に悪い思いしてるんですけど?