5.マーガレット、王城に行く
「マーガレット、ダイズ家と縁を切りたがってるのに、爵位を受け取るのか?」
「お母様の遺品と言えば、遺品だから……。
お父様はお母様が亡くなって半年で再婚したのよ!平民でも早すぎない?あり得ないでしょ?悪びれもせず、私に『新しいお義母さん連れてきたぞ』みたいな顔したさぁ」
「それはキツイな……。子供心親知らずって感じだな」
ヤバっ、ギルドの中が暗い雰囲気になっちゃった。
「あ、それよりも次はどの依頼にしようかなー?」
「マーガレットちゃん指名って依頼あるのよ~」
「「「「「なんの陰謀だ?」」」」」
知らない間にギルドでの私の立ち位置が皆さんの娘さんになったようで……皆さん過保護です。
「陰謀じゃないわよ!依頼主は王家よ!!」
と、カウンターのお姉さんは言いますが……。
「ますます陰謀臭い」
「貴族ってのは何を考えてるのか腹の中が読めないからな」
まぁそうなんだけど、私も半分貴族だし大丈夫じゃないかな?とはいえ、保護者のダッシュも一緒に依頼を受けてくれるらしい。
まずはどんな依頼なのか依頼主に話を聞きたいんだけど……この場合は王家って誰?に話を聞けば?
よくわからないから、カウンターのお姉さんに聞いてみた。
「うーん、この場合は誰なんだろうね?」
「依頼を受けたのって誰なんです?」
「新人の子で、後先考えずに受けちゃってまぁ私達も苦労してるワケよ」
……頑張ってください。
「依頼の紙持って王城に行けばわかるかな?」
「門番がそんな紙で信用して中に入れるか?誰かのサインがあるならまだしも……」
依頼の紙を見た。謎のサイン。
「これ……宰相のサインじゃないか?」
「ダッシュ、見たことあるの?」
「ああ、俺も昔指名で依頼を受けたことがあってな。その時」
「門番の人も宰相のサインってわかるかなぁ?」
「王城に行ってみる価値はありそうだ」
かくして、私達は王城へ行くことにした。
「宰相閣下に確認して参ります!」
と、門番の一人は宰相の所へと行った。
当然門番が減ったのだから、王城の入り口が手薄になる。
そんな時に役に立つのが、冒険者!×2
まさかCランク(Bランクに近い)のと、ダッシュ(ランク聞いてないけど、ギルドが信用してるし強いんだろう)がいるとは思わないだろう。
「門番が減ったと思ったら、お嬢ちゃんとその保護者かなぁ?」
「正解」
ダッシュが余裕で応える。まぁ、正解なのは事実だし。
「俺達はこれでも名の知れたワルってやつなんだよね。ここを通してくれないかな?」
「王城を守るのが門番の仕事です!」
素晴らしい!門番の鑑だね。
「うーん、俺達も冒険者の中じゃ名の知れた嬢ちゃんとその保護者なんだよね」
名の知れた嬢ちゃんとその保護者って何だろう?
それからすぐ戦いが始まった。名の知れたワルという集団は5人くらいいたけど、そんなに強くなかったなぁEランクくらい?
私の分身体の攻撃(物理的)でギブアップ宣言し、尻尾を撒いて去っていった。
「お強いですね、お嬢さん」
「えーと、冒険者ギルドで一応Cランクを頂いています」
私はネックレスになっているギルドカードを見せた。
「ねぇ、ダッシュって何ランク?聞いたことない」
「そうか?確かSだったかなぁ?俺はあんまり興味ないからなぁ」
Sランクの冒険者なんて世界に数人しかいない超レアじゃん。
門番さんなんてダッシュにサインとか握手を求めてる……。
あ、宰相閣下に確認しに行った門番の人が帰ってきた。
「確かに自分が依頼したとのことです。ご案内するのでどうぞ、こちらへ」
「あー、宰相閣下の部屋の場所は変わっていない?数年前と」
「変わったことがありません!」
「じゃ、案内なしで行けるよ。昔行ったことあるからさぁ。門番が減ると危ないから、君は門番に専念しなよ!」
「はっ!」
よく覚えてるなぁ。迷子になった私とは大違いだ。王宮なんてどこも同じに見えて迷子になりそうなのに。
「確かこの部屋が宰相閣下の執務室のハズ!宰相閣下!呼び出しに応じて参上しました」
「入り給え」
低く暗い声が聞こえた。暗いのは声だけじゃなくて、部屋の中も物理的に暗かった。未処理の書類が山積みになって窓からの光が遮られている。
「ジェシー第3王子お久しぶりです」
おうじぃぃぃぃぃぃ????聞いてない。
「いいよ、かしこまらなくて。俺は好きなように生活させてもらってるしさ」
「で、そちらがマーガレット嬢ですな?」
「依頼の方は?」
「実は……ダイズ侯爵家が借金を抱えながらも豪遊し放題。領民からも苦情が」
私が爵位を受け取れる年齢になったら爵位を貰いに行く宣言したからなぁ。今のうちに豪遊してるのでしょうか?平民落ちする前に。
「私はまだ爵位を受け取れる年齢ではないので、侯爵代理に代理を務めてもらっているハズなのですが、その体たらく。実に恥ずかしい!」
「うん、それでなぁ。このままだとダイズ侯爵家はお取り潰しとなる」
「それは困ります」
「そこでだ。特例としてまだ受け取れる年齢ではないが、年齢を早めて爵位を渡そうという話になった」
「借金とか込みですか?」
「いやぁ、侯爵代理が無駄に作った借金は侯爵代理に支払って貰うよ」
「はぁ、よかったぁ」
「しかし、その年齢で領地経営などをすることになるが大丈夫か?」
「現・侯爵夫人よりは出来がいいでしょう」
「俺も手伝う。ほら、保護者だし?冒険者ギルドでも事情を説明すれば手伝うってやつらが多いと思うぜ。人相は悪いけど、気のいい奴らだからなぁ」
「ゴホッ、そういうことなら安心してお任せできそうですね。あの侯爵代理よりもうまく領地経営をしそうな気がします。陛下にそのようにお伝えし、できるだけ早く爵位をマーガレット嬢へと譲渡するように手配しましょう」
「「お願いします」」
「この話をしたくて、指名だったのか……。ダッシュが一緒で助かったわ、色々。っていうか第3王子って何?なんで内緒なの?」
「え~?周りが俺に気を使って動きにくくなるかなぁって」
それはわかる気がする。絶対気を使う。
なんかいろいろ大変なんですね。