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お家なくなっちゃいました

「まだ寮に入れないってどういうことですか!?」


 おばあさんと別れた私は駅を出て、自転車を借り、早速学校へと向かった。学校は丘の上にあり、電動自転車でも中々登るのが大変だったのだが、何とか辿り着くと、私は学校の総務課へと向かった。今年から暮らす寮の部屋の鍵を受け取るためだ。だが、そこで私は待ち受けていたのは総務課のおじさんの衝撃的な一言だった。


「あ~、君まだ入れないよ?」


「ええ!? どういうことですか!?」


 予想外の返答に私は顎が抜けたように口をあんぐりと開けてしまう。


「あのね......君ね......」


 おじさんはトントンと私の寮への申請用紙のある場所を指先で叩いた。


「ほら、入寮期日を見て。2週間先。君早く来すぎなのよ」


「ええ!?」


 私はおじさんから用紙をパッと受け取り、内容を見た。確かにそこには2週間先の入寮日が記載されている。


「そんな!? じゃあ私どうすればいいんですか!?」


 私は思わずおじさんの胸倉をつかみ上げた。女子中学生らしからぬパワーに首を締め上げられた、おじさんは目を白黒させながら、息苦しそうに答える。


「ぐ......ぐ、んなこと言われても知らんよ......」


「そんな無責任なこと言わないでください! このままだと私野宿ですよ! 野宿!」


「ぐええ......そんなこと言われたって......頼る親戚とかいないのかい?」


「天涯孤独です! 唯一の親戚は名前も住んでる場所も顔すら知りません!」


「で......電話番号とかは?」


「知りません! お金とかも送った荷物の中にあるんです!」


 このあたりでおじさんの顔色は青くなってきた。そしてそのままカク~ンと力が抜けて落ちてしまう。どうやら締めすぎたようだ。


「お! おじさ~~~ん!?」


 私はびっくりして手をぱっと放してしまった。そのままおじさんはドタ~ンと床に倒れてしまった。


ーーー

 その後、意識を取り戻したおじさんから、とりあえず寮に早めに入寮できるか掛け合ってみるから、それまで待てということで総務課を追い出されてしまった。このまま学校にいてもしょうがないと思った私は、とりあえず駅付近まで戻ることにした。


「段ボール......いや、最悪ゴミ袋とかでも......」


 私の思考はすでにすっかり野宿でどうしのぐかにとらわれていた。およそ乙女の思考ではないのだが、田舎の野山でも平気で昼寝できた私にとってそれはたやすいことに思えた。


「ん......?」


 思考の海に潜っていた私はすぐに現実に戻された。ブレーキが効かないのだ。


「あれ? あれ?」


 いくらレバーを引っ張っても、カシュッ、カシュッと空気が抜けたような音がするのみで、一向に減速する気配がない。ずっと考え事をしていたため、自転車のスピードもすでに足をこすらせて止めることのできる速度を超えていた。


「あれれ? これはちょっとまずい?」


 私は段々と焦り始めた。このままではまずい。田舎の地面と違って、この道はアスファルトだ。一度こければそのまま体は大地との摩擦でぼろ雑巾のようになるだろう。それだけは避けねばなるまい。


 しかし私の奮闘も空しく、自転車ごと宙を舞い、通りすがりの男の子にそのまま体当たりする結果となってしまった。


 最後に見えたのはどこまでも抜けるような青い大空であった。


 男の子の顔の感触が尻にあたっている。


 私はなんとなく、


「あ~今日キャラもののパンツだったな~、もう少し可愛いのにすればよかったな~」


 などと意味不明なことを考えながら気を失った。

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