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Lost Love  作者: 星河語
第3章
9/30

3‐1

 二日前に(さかのぼ)る。リセット日本支部では、問題が発生していた。

 勇太と貴奈は月曜日と火曜日に、続けてリセットを学校で行った。そして、三日目の水曜日。

「ちょっと、やばいな、あまりに同じ所でリセットしすぎ。そのせいで、居場所つかまれそうなんだけど!」

 高橋麗子(れいこ)が叫んだ。リセット日本支部のプログラマー兼ハッカーだ。

 ある高級タワーマンションの一室。十階が全部リセット日本支部のフロアだ。


「ほんとだよ、ちょっと、祥二、あんた、あの子達にちゃんと説明したの!? 家以外でするなって…! 一週間も時間をやりすぎなんだよ! 親切にさ!こっちは、ボランティアじゃないっつーの!!」

 古田知恵も怒鳴る。彼女はハッカー専門のエンジニアだ。部屋中にパソコンのキーボードを(はげ)しく打つ音が(ひび)いている。


「俺のせいだって言うわけ!? 前にはお前、一週間くらいは時間やって当然って言ったくせに…!」

「状況が違うでしょ!! 馬鹿ね! あんたってほんっと、仕えないやつ! 人を見て、状況判断しなさいよ! ばっかじゃない!」

「お前、接触しないくせに、文句ばかり一人前だな! 初めて会うのに、そこまで分かるか! 目の前の高校生が、どれくらいの時間をかけてリセットできるかどうかなんて、分かるわけないだろ!」

「処理はこっちがやるのよ!! 能なしは引っ込んでろ!」

 知恵が感情的に怒鳴りまくる。それでも、指だけは動いている。

「ほんっと、祥二、あんたって」

「知恵! もう、それ以上、言わない。」


 リセット日本支部副代表の山岸千哉が、仲裁に入る。知恵は猛烈な内弁慶でひきこもりだ。小学生の頃から、激しくいじめを受けたと言うが、この性格のせいだろう。親しくなった途端に、相手を見下す。

「そうよ。知恵。あんた、引きこもりで外に出られないでしょうが。それを祥二はできるのよ。はっきり言うけど、あんたのハッカーの能力がなければ、うちにはいらない。前にも言ったでしょ。その性格、直しなさい。とにかく、何か言いたくても口を閉じて。今は、作業に集中する。」

 リセット日本支部代表、山岸アリアがぴしゃりと告げる。知恵は唇を尖らせながらも、口を閉じた。


 代表と副代表は夫婦だ。夫の千哉よりも妻のアリアの方が厳しい。リセット日本支部は、全国にいくつか活動拠点があり、全部で百人単位で活動しているが、その中でも最高のカップルだと言われている。

「祥二、それでどういう風に説明した?」

 なんとか治まった所で、千哉が祥二に尋ねる。

「前の子は、家族のリセットをするのに、一週間かかったので、一週間以内にリセットするように言いました。家族にだけするのか確認はしたと思うんですけど、学校でするなとは言わなかったと思います。」

「そうか。やはり、やり方を変えるしかないな。一回したら、次の日には回収する方向で行くしかない。日本じゃ、こんなに積極的な子達がいなかったから、高校生だし一週間あげたけど、学生も期間は一日にするしかないな。」 

 千哉が(うな)った。


「すみません。学校でするなと厳しく言っておくべきでした。できるだけ、短時間で説明しないといけないと思い、ちょっと説明不足だったと思います。」

「仕方ない。今度から気をつけよう。接触時にあまり姿をさらすなと、口を酸っぱくして言ってるの、こっちだしね。なんだかんだ言って、祥二が一番成功率高いんだよ。リセットさせるの。」

「ご心配なく、何とかなりそうですよー。ね、外山(とやま)さん。」

「……おう。天才の俺がついてるから、大丈夫。」


 のんびりした声は、ミランダ・ショッター。彼女は多国籍の血筋だ。薄いコーヒー牛乳のような肌色をしているが、本人曰く、醤油が薄いせんべい色なんだという。見た目は外国人だが、生まれも育ちも日本だ。悩みは英語が出来ないのに、外国人に英語で話しかけられることだ。


 話を振られたのは、外山恭介。子どもの頃からの天才ハッカーで、有名な世界的ハッカー集団、バックで活動していたという。

「おし!」

 恭介が声を上げた。

「今回は振り切った。」

「でも、どうしますか?後、二日もある。こっちから連絡するにしても。」

 祥二が困り切って口を開く。

「そうね。仕方ないわ。後二日、学生だし、やりたいようにさせましょう。」

 アリアが決断する。

「でも、代表、大丈夫でしょうか。危ない目に()ったりしないか。」


 アリアはにっこりした。彼女は父親が英国とインドのハーフだという。母親は日本人で、三カ国語ができる才女だ。

「大丈夫。その時のために、君がいるんでしょ、鈴木君。」

「えー、でも、俺、合気道五段なだけです。向こうは銃じゃないですか。」

「まあ、裏方の応援は任せて。こっちでなんとかするからさ。」

 千哉もにっこりした。

「それに、日本は厳しく銃規制されているし。持ち込むだけで難しい。ナイフとかが多いから大丈夫でしょ。」


 アリアは祥二に言った後、さらに続けた。

「それに、あの子達も、行動と結果には責任が伴うことを理解しないとね。日本人は勘違いしているのよ。自由ということを。“自由”に行動したら、どんな結果であれ、責任を負わなければならないことを理解していない。未成年だからって特別扱いはされないのよ。」

 そういう所がアリアのドライな所だった。いや、アリアのというわけでもないだろう。欧米の言う自由と、日本の自由は確かに乖離(かいり)している。


 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                               星河ほしかわ かたり

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