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Lost Love  作者: 星河語
第2章
8/30

2‐2

 勇太と貴奈は話し合い、勇太の家族が明日、次の日に貴奈の家族のリセットをすることにした。土日で学校は休みだから時間はある。両親は家にいる。父の昌義(まさよし)もいるはずだ。

 リセットした日は両家とも、混乱の極みだった。カオス状態だ。両親はマイホームがゴミ屋敷になっていることに気がつき、仰天した。これでも、勇太がせっせと片づけたのだ。生ゴミと資源ゴミはかなり減ったはずだ。

 ちなみに段ボールがやたらとあったのは、母の美子(よし)がネットで買い物を済ませていたからだった。


 近田家は家族総出で大掃除を行った。次の日は斉藤家も同じだった。

 ところで、父の昌義がヘンな人形を買おうとしていたことが分かった。しかも、三百万もするAI搭載のちょっとエッチな人形で、『あなただけ♡』対応の人形だったのだ。搭載しているAIに『あなただけ♡』をインストールできるようになっているらしい。


「なんで、こんな物を買おうとして!」

「ご、ごめん、だって家族みんなで使えばいいかと思って。」

 いや、誰が共有するか? きっと、独り占めしたいはずだ。勇太は思う。

「わたし、全然知らなかったー。これがあるなんて。マル君が動いたら良かったのになー。残念だった。」

「……。」

 きっと買っていたら、昌義は押しのけられ、母の美子に奪われていただろう。

「でも、三百万か。危なかったわ、セーフじゃないの。買ってたら、我が家の経済、ヤバかったんじゃない?」

 こんな顛末(てんまつ)があったが、なんとかリセットされて両親の目は覚めた。斉藤家も同じようなものだ。


 日曜日の夕方、貴奈がうちにやってきた。玄関先で話を聞くと、リセットのことだという。学校のクラスでもリセットしないかというのだ。

「でも、誰にするかって聞かれて、家族って言ったよな。あんまり、それ以外、しない方が賢明なんじゃねーの。」

 勇太も最初は乗り気じゃなかった。


「でも、友達も先生もあの状態はヤバいでしょ。ちゃんと授業になってないし、来年、受験だし。一応、大学行って女子大生やってみたいし。」

「そんな理由で大学行くのかよ。(ちまた)じゃ経済が厳しくて、大学行けない人もいるのにさ。」

 貴奈が唇を尖らせた。

「いいじゃん、わたしの夢なんだから。小さいけどさ、それくらい、いいじゃん。」

「分かったよ。それで、学校でもするって?」

「うん。一応、借りたの勇太だし。勇太がどうするかだと思って。」

 確かに貴奈の言うことも一理あると思う。クラスの友達とも全然話ができていない。ロスト・ラヴしない限り、きっと話もできないまま、卒業となってしまうのだろう。それは嫌だ。

「分かった。たぶん、一日に一回っていうの、機械的な上限だと思うから、それさえ守れば、いいとは思う。」

「じゃあ、やる?」


 貴奈が目を輝かせた。クラスの友達のことが心配なのだろう。その辺は優しいヤツだ。

「じゃあ、俺のクラスとお前のクラスからな。後はできたらってことでどうだ? 半径二十メートルだし、一回でニクラスくらい、いけるんじゃ?」

「あ、そうかもね。教室の大きさ、二十メートルもないもん。」

 ということで、二人は次の日から、学校でもリセットを始めた。最初はドキドキものだった。でも、みんなが騒ぎ出して、目が覚めたように『ロスト・ラヴだ!』って騒ぎ出して、本当に目覚めて現状に気がついていくのをみると、やって良かったと思う。

 月曜日から金曜日までやるつもりで実行した。二人の目論見どおり、一回で二学級分できたので、月、火で二年生が終わった。水曜に職員室、木曜には事務室と校長室だ。近くにあるので、ここも同時に終わった。金曜日には三年生を少しできた。


「ねえ、あの鈴木さんに会ったらさ、もう一週間、貸してもらおうよ。そうしたら、学校全部、終わるじゃん。一年生もしてあげないとかわいそうだし。」

「そうだな。」

 勇太も乗り気になっていた。自分達の力で、厳密(げんみつ)に言ったら違うけど、でも、自分達のしたことで世界が変わっていく感覚は、とても特別感があって面白かったのだ。

 午前中までは何事もなく問題なかった。だから、余計に高をくくっていた。このゲームを世界中にばらまいたのが、謎の世界的な組織だということを忘れていたし、たいしたことがないようにさえ思っていた。

 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                               星河ほしかわ かたり

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