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モータルワールド~現代チート?海兵隊超兵士の黙示録戦線~【修正版】  作者: うがの輝成
第5章 アビス ウォー 絶界の戦い
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第95話 THE冒険者’S withI



 そこは、何処かの城下街であった。欧州中世時代を思わせる組積造や、半木骨造(ハーフティンバー)様式の建物が並び連なる、古き街並みの様相。

 

 街の中心には、幾つもの尖塔が並ぶゴシック様式、荘厳と聳え建つ巨大な城。それは、圧巻の存在感を示し、超然と佇み街全体を睥睨していた。

 

 その巨城の南には、天変地異によるものなのか、何かに天から穿たれたかのような大縦穴が開いている。

 中を覗けば息を呑む深さ、周囲の切り立った断崖岩壁には幾種もの緑が生え、大小幾つもの滝が流れる瀑布帯となっていた。


 街の規模は直径10kmほどはあり、堅牢な外壁に囲われた所謂、城郭都市。中世であれば大都市と言われる街の様相が窺えた。

 都市の周囲は、険峻な山々と広大な森林に囲まれ、農地や幹線路も見られず、まるで世界から隔絶され、突如そこに都市が現れたかのような、摩訶不思議な在り様。


 空を見上げれば晩秋を思わせる巻積(ウロコ)雲に覆われ、夕暮れ時のような橙色に染まっている。その儚い陽の光が陰影を落とし、黄昏た街並みをより一層、物寂し気に映し出していた。


 すでに、都市の機能は失われ、遠目に所々に人らしき姿は見えるが、活気どころか生気すら感じられぬ人々が徘徊し、()えた臭いと共に漂っている。


 幾つもの家屋や建物に刻まれた損壊跡。その痛ましい争いの爪痕が、人々の営みを無慈悲に奪い去った事を容易に想像できる。


 しかし、それも遠い過去のようで至る所につる植物が茂り、その古傷痕を時の流れと共に覆い塞ぎ、緩やかに癒していた。

 

 

 その寂れ廃れた城郭都市の南西部の広場に、何の物見遊山か、数十人規模の訪問客らの姿があった。


 どう見ても観光客では無かろう、いずれも多種多様の武装を纏った出で立ち。

 50人以上、2から3個小隊か1個中隊規模。男女入り混じった戦闘集団。


 その武装は、剣や槍類に戦斧、戦槌、盾、弓、杖など。防具は重装金属製、革製、謎材質の甲冑類の装備に、ローブや謎材質布製の軽装具。ファンタジー感満載の集団である。


 全身ガチガチ甲冑武装の者、部分的な箇所のみの防具や革製軽装具。つばの広い三角帽子に黒ローブ姿、神職系白装衣。露出度の高い軽装備女性など、各自思い思いの装い。

 人種に置いても様々で、欧州系のような白人タイプ。アフリカ系黒人タイプ。アジア系黄色人など、地球人と同様の体格と顔立ち。


 他に、耳の尖った眉目秀麗なエルフ。小柄ながらも筋骨隆々なドワーフ。大柄の強靭屈強そうな人型竜種爬虫類、竜人(ドラゴニュート)

 更に、大柄、小柄であったり、獣面、人面ケモ耳の獣人種などの亜人種。どこぞのイベント会場かと思わせる多種多様の面々が揃っていた。

 しかし、コスプレでは無く、全てリアルガチ(ヤバイよヤバイよ)勢武装の異世界住人たち。その中には‶従魔師(テイマー)〟もいるのだろう、使役された狼などの獣種や鳥類種の姿も見える。


 彼ら彼女らは所謂「冒険者」と呼ばれる存在。複数チーム混合のレイドパーティ。生まれ育ったのは『ヒュペルボリア』と呼ばれる異世界。彼らはその出身者たちだ。


 と、ここまでがファンタジーガチ勢。濃いキャラが多すぎるこの異世界のメンツに、明らかに分かる地球人の戦闘ガチ勢集団が加わっていた。


 武装はMK16&M4(アサルトライフル)等の銃火器に、迷彩カラーリングの戦闘服にマグポーチ付きのボディアーマー。暗視装置(NVG)付き、アドバンスド() コンバット() ヘルメット()の装い。


 所属は、アメリカ合衆国軍。アフガニスタン作戦で消息を絶った米軍兵たちの一部であるが、分隊規模の少数部隊。


 その数は、ヒュペルボリア冒険者勢52名。地球の米軍兵士12名。この法則も戦闘形式も異なる別世界の者同士の戦闘集団が、何の因果か協力し合って行動を共にしていた。


 ここに来るまで、どれだけの戦闘を繰り返して来たのだろう、いずれも装備類に細かな傷が多数見える。

 それを物語るかのように、彼らの通って来たと思われる道筋には、至る所に武装した人型や、毛の無い筋張った歪な大型犬種のような死骸が幾つも転がり、これらと戦い抜いてきた事が見て取れる。


 疲労の表情が濃く現われているものの、負傷した者は見られない。しかし、無傷ではあるのだが、負傷した血流の痕だけは装備、衣類に付着していた。


 つまりは回復役(ヒーラー)。彼らの中にいると思われるリアルガチ(ヤバイよヤバイよ)の‶治癒魔術師〟の存在。



「何なんだこの街は!? アンデッドだらけじゃねーか! まともな人間はいねーのかよ!?」

「それもあるが、そもそもここは何処の街なんだ? 転移トラップに引っかかり、見たことも無い魔物がわんさか。やっとの思いで未開の兇悪ダンジョンから地上に抜け出せたと思ったら、全く誰も知らんアンデッドだらけの街って……」


「もー、丸一日以上休む間も無く、引っ切り無しで戦闘が続いたろ!? あーすんげー疲れたー。 俺はもう動かねぇぞー。 敵が襲ってきたら任せたぞー!」


「あんた、そんな所に寝そべっていたら、敵が襲う前に味方に踏み潰されるわよ」

「何なら、俺が今すぐ()()()踏み潰してやるよ!ハハハハハ!!」

「それ、誤ってとか言わねぇよ! ぜってーわざとじゃねーか!」


 これまで彼らは、未知の地下ダンジョンを歩き回り、延々と続く戦闘。そして、地上に抜けてこの謎都市の円形状の広場に辿り着き、やっとの思いで休息に勤しんでいると言う流れ。


 広場中央には干上がった噴水跡。その淵や木製、石造りベンチ、直接地べたに座る者。革製水袋にて水分補給している者。疲れ果て、大の字で寝そべりグダっている者。

 体力が余っているタフな者は談笑したり、うろうろと練り歩いたり、武装の整備をしたりと各自様々な様子だ。


 そんな中、冒険者たちの各リーダーや米軍兵のチーム指揮官2名が集まり、今の状況、今後についての話し合いをしていた。 

 冒険者側のリーダーは、人種(ヒューマン)3名。エルフ1名。ドワーフ1名。竜人(ドラゴニュート)1名。獣人種3名。それと、その一人に付き添う獣人2名&黒毛の大狼2頭。


「……つまりは、貴方たちもこの街…都市のことは、全く知らないと言う訳だな? レオバルト殿」


「同じ立場だ、敬称はいらん。──まぁそう言う事だ。ここにいる我が同士たちは、世界各地(ヒュペルボリア)の都市や街を巡って来た者らが集まっている。そのいずれも、こんな大きな都市の存在など知らぬと言っている。まぁ、それも現時点での話だ。

──‶アキオ イナバ〟」


 米軍兵の指揮官代表は、身長180cm前後。細身だがガッチリとした体形。国籍はアメリカだが血筋は純日本人。

 米陸軍特殊作戦コマンド傘下、第75レンジャー連隊所属の中尉、コールサイン「コヨーテ1」リーダー「アキオ イナバ」。漢字表記では「稲葉 秋雄」。

 それに付き添うもう一人の兵士は海兵隊チームの指揮官。他の同チームの者、海兵隊兵士らは、冒険者たちと交流を図っており、主にドワーフたちがMK16やM4カービン、アサルトライフルに興味津々のようである。


 冒険者側、総指揮リーダーを務める「レオバルト」は、獅子の(たてがみ)ような金髪長髪。獅子型獣人のような見た目だが、一応人種(ヒューマン)の30代。身長は2m10cmの鬼マッチョな巨漢。

 紅蓮の炎のような紅色のいかつい鎧。150cmはある大剣を背に帯刀し、圧倒的な強者の風格を醸し出している。 


「現時点で……。それは、すぐ解明されると言う事か?」

「まぁ、そんなところだな。話を聞けるような人が居らずとも、これだけの形を保っている都市なら何処かにあるだろう。──ここに纏わる文献がな。今、その調査に人手を割いている。(じき)にすぐ分かるだろう」


「そういう事か……まぁ、当然の話だな。そんな分かりきった事を…余りにも未知の状況とは言え、軍人として冷静さを欠いていた事を恥じるよ」

「ガハハハハハ!! まぁそう、卑屈になるな。 お前たちがいた世界とは理が違う。俺たちにはそう言った知識の利があるだけで、全く動揺していない訳ではないさ!」


「危機的な状況のところを助けてもらったばかりか、あの魔術…負傷の治癒までしてもらい、同行を申し出てくれた事は、正に地獄に仏。全く、感謝の言葉が尽きないよ」

「なぁに、気にする事は無い。 こちらもダンジョン探索中に、未知の転移トラップで、不明の地に飛ばされた同様の身の上だ。住んでた世界も文化が違うとも、会話が交わせるなら同族と変わらんからな。敵で無ければ、助け合うのは当然の事だ!ガハハハハハ!!」

「ガハハじゃなくて、痛い痛い! そのごつい籠手を嵌めた剛腕でバンバン叩くな叩くな! 肩の骨が砕ける!!」


 レオバルトは見た目に違わず、性格の方も豪放磊落(ごうほうらいらく)。人望の厚さも窺える人格者であり、その天性のリーダー気質により、国の王と言われても疑いはしないであろう傑物漢が見て取れる。

 それと、言語形態が異なる面倒なやり取りも無く、自然に会話できる仕様(面倒だし ご都合で)に万々歳。


 そして、陽気で快活な様子から一転、真面目な表情に変わり。


「それで、イナバ。そちらの部隊の現在の状況は?」


「……ああ、当初は300人以上の大隊規模であったが、例の転移で分散し、他部隊の状況は分からないが、俺たちに関しては、直下の2チーム12名と、別所属の1個分隊の15名。計27名であったが、化け物との戦闘で半数以上。15名が戦死となった。認識票(ドッグタグ)も回収できずに……」


 そう語りながら肩を落とし、苦渋の表情を浮かべるイナバ。戦いに身を置くものとして、覚悟はしていたものの、寝食を共にした部下、戦友を失うのは身を引き裂かれる思いであるが、明日は我が身の状況。


「なるほど、それは愁傷の思いであるな……。もう少し早く遇えれば良かったのだが……」

「その言葉だけでも痛み入るよ。今いる俺たちも辛うじて生き残ったが、命辛々の状況を救ってもらえた身だ。その幸運だけでも、唯々感謝するばかりだよ。

──それで、そちらの状況は?」


「ああ、実はこちらもかなりの犠牲があってな。簡単に説明するが──事の始まりは未開拓のダンジョンの発見。その調査に向かった冒険者たちが次々と消息を絶ったわけだ。それで、行方不明者の捜索、ダンジョン探索、及び脅威の排除の為に、我々高ランクのパーティ、6名編成、8組のレイドパーティが組まれ、万全を持して乗り出したはいいが結局同様、行方不明者の仲間入りってな感じだ……」


「……それで、貴方たちの仲間も犠牲に……」


「まぁ、正確には、このレイドパーティの仲間は皆無事だが、行方不明者らの方は散々な状態の遺留品のみ。状況を察するに一人も生存者はおらんだろうな……。その代わり、()()()()()と出会い行動を共にし、その後に君らが加わったと言う訳だ。慌ただしい状況だった為、いずれも碌な話もできずであったが、ここでようやくと言ったところだな」


「……なるほど、そう言う話の流れか。こんな状況であれば、少しでも戦力は必要であるから当然の流れと言えるな」


「フッ、やはり軍人と言う輩はお堅いな。 戦力云々はまた別の話。困った者同士、手を取り合おうって単純な心情的な話だ。それと人数が多い方が場が盛り上がるだろう! ガハハハハハ!! 」

「ハハ……なんの祭りだよ。このノリ、クレインに似ているな…やはり、力の有る者はこう豪胆な者が成るべくして成ったと言うべきか……」


 そんな豪快奔放なレオバルトの在り様に、苦笑を浮かべるイナバ。



貴殿(うぬ)ら、少々割って済まない。我の尋ね言も一同諸々に、傾聴のほどを願い乞うたいのだが構わんかいのう……?」


「「「「!!!!????」」」」」


 その会話を黙って聞いていた各チームのリーダー格の一人。狼種獣人と思われる女性が一段落したと見計らい、何やら仰々しい口調で語り掛けて来た。

 しかも、くっそ悩ましいナイスバディな絶世の美女獣人。


 見た目的には20代半ば。身長は175cmほど。プラチナブロンド、ナチュラルロングヘアーに白雪のような色艶の犬耳。瞳は金色。

 装いは白地に黒の細かな意匠。首元に白毛のボリュームファー付きドレスコート。   

 裾は長めの鳥の翼を模したような艶やかさで、軽甲冑と併せ持った造り。足鎧も細かに装飾されたレギンス。太腿が見える(何かエロい)ニーハイ仕様。武器は左腰の白の鞘に収められた白銀色刃の日本刀。



「……美しいな…。おっと、思わず見惚れてしまったが、彼女は……?」 


 イナバは、この麗しき獣人女性をパーティリーダーの一人だと思っていたが、周囲のこの反応に違和感を感じつつ、レオバルトに尋ねる。


「……ああ、さっき話した、別の探索者一行のリーダーだ。事が落ち着いたから改めて見入るが……これは、非常に麗美であるな……もしやどこぞの皇族の御方では?」


 美女獣人の傍には、同族の従者と思える屈強そうな白と蒼の混合毛の狼型獣人が、大矛と大曲刀を携え控えており、更に従魔と思える2頭の黒毛大狼を連れ従わせていた。

 その放つ高貴なオーラと、いかつい従者らが取り巻いていては、いくら血気盛んな冒険者でも、ちょっかいは出せぬであろう。


「ふむ。我らは、(いささ)か訳ありの身の上でな。その辺りの詮索は差し控えてもらおうぞ。名乗り遅れたが我が名は『ミゼーア』である」


「……なるほど、訳有りか。相分かった。その辺りの事情は暗黙としよう。俺はこのパーティを指揮らせもらっている、レオバルトだ。……その深刻そうな表情。他のメンバーの紹介は後回しだな。それで、俺たちに尋ねたい事とは何んだ? ミゼーア」


 余程、重要な要件なのだろう。ミゼーアの表情は暗く、疲労の色が濃厚だが、藁にもすがりたい程の一心の必死さが垣間見える。


「実は、幼き子供を探しておる。我と同じ獣人の子供だ!」


「「「「!!!!」」」」


「幼き子供……。こんな危険極まる地に……」


 これには、苦渋の表情を浮かべるレオバルト。多くの戦闘経験のある冒険者ですら憂き目に合っているのだ。その生存の可能性は絶望的である。と、周囲の面々も想思い、一様一致の結論に至る。



「……うむ。貴殿らの想像している事は分かる。だが、幼き獣人と言っても《《獣化》》できる上に、これまで相対してきた魔物どもに、後れを取るような育て方はしておらん!

── あの子供たち二人はな!」


「二人の獣化できる子供……なるほど。それなら生存している可能性は高いな。それで、その子供たちの特徴と名前は?」


「獣化状態時は、紅毛に左腕に黒模様。白毛の背に二本の蒼の線模様の狼種……」



 すでに、お分かりいただけたろう。その二人の獣人の子供とは───。




「カレンとトアだ」



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