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モータルワールド~現代チート?海兵隊超兵士の黙示録戦線~【修正版】  作者: うがの輝成
第6章 断罪のレクイエム
144/161

第144話 異種首脳対談




『『「「どう言う事!?」」』』


 米兵&幻浪旅団一同、不可解総じての大唱和。


 菌類肉食動植物パラシアの王ハ=ゴス。その背後に跪き控える、寄生変異体ラフレイダー特異種、ソ=ドムとゴ=モラ。


 見るからに凶悪、狂暴、残忍、殺傷本能の塊と思える悪夢の様相。

 力無き者が遭遇すれば、否応なく絶対死は確実。厄災たる存在が三体。


 しかし、ここに集まるは、鬼種、魔獣と超人種等の特異種(ユニーク)揃い。超然たる戦闘部隊『幻浪旅団』。


 その渦中、厄災三体と直近で相対するは、旅団団長トール。

 傍には副団長リディ、神狼双子(フェンリル)冥狼兄妹(ガルム)神獣剣歯白虎ホワイトサーベルタイガー、剣聖クロエの錚々たる超越者の面々。一触即爆発、超激戦を誰しも想像していた事だろう。

 

 それが、代表同士で対話とは、(はなは)だ想定枠外の展開。


 ハ=ゴスは、あたかも騎士王が矜持の如く名乗り合いまで所望。

 肩透かしもここに極まる在り様だが、対話拒否とあらば、即時開戦上等の構え。


「──‶今は、これ以上俺たちと事を荒げる気は無い〟って、つまりここで()り合う気は無いってことだな」


 現時点では停戦の意向だが、裏を返せば、いずれ交戦必須と言う事。

 それは、トールとて上等(しか)り。部下であるギブスや米兵士たちがこのハ=ゴスを始めとする厄災種族の餌食となったのだ。きっちり落とし前は付けるべきは当然。そもそも、このような迷惑極まる寄生生物種を放って置くべきでは無い。


『如何ニモ。ココデ、ツマラン勢力争イナド利モ無イ。ソレヨリ、我ラ種族始祖ヨリ脈々ト継承スル‶宿願〟ヲ果タスベキ時』


 これまで揚々と高笑い、エンジョイ姿勢のハ=ゴスであったが、ガチ魔王モード。唯でさえ悍ましい様相に重圧さが増大。怨念そのものを具現化したかの様な、禍々しい兇相を縁取る。


「クソっ!震えが止まんねーよ!」

「ヤバイヤバイヤバイヤバイっす!!」

「鼻が、鼻がもげ落ちるね!」

「直視するな!精神を持ってかれるぞ!」

「全くクレインは、あれを前に何故あれだけ平然としてられるんだ? 単に豪胆とかのレベルじゃないぞ……」 

 

 その圧倒的な凶威圧感に、パニック状態の米兵(人間)たち。その重威圧の中を涼し気な表情で泰然と対話するトール。


「宿願?始祖より継承って、相当大昔から成し得なかった、代々の悲願ってわけか。その様子だと、世界征服云々とかの話じゃねーな……それは‶宿怨〟ってやつか」


 この厄災に代々恨まれるとは、特級の呪い同然。それが未だ果たされてないと言う事は、同等の只ならぬ存在であるのは確実。それは──。



『‶ミ=ゴ〟。ソレガ、我ラ怨敵ノ名ダ』


「ミ=ゴ……。クトゥルフ神話に記される地球外生命体の名にあったわね」

「確か、暗黒星ユゴス人でしたか…?菌類甲殻種の類だったとの記憶です」


 その名に覚えのあるリディとクロエ。それはクトゥルフ神話所以の宇宙人(エイリアン)種族。


「菌類って、このハ=ゴスと言うか、パラシアの生体分類も菌類だったな。もしや同郷で敵対関係だったって事か」


『察シガイイナ‶魔王〟トールヨ。然リダ。奴ラハ、唯一我ラ種族ヲ捕食対象トスル絶対敵種。(アマツサ)エ、コノ地ニテ繁殖ヲ促シ家畜然。許スマジキ所業』

 

「事情は理解したが『魔王』は止めろよ……。まぁつまり、そのミ=ゴってのが、この‶煉獄〟にもいるって事だな」


「「「は!?」」」

「煉獄!?」

 

 ここでクロエも含め、状況について来れていなかった米兵仲間たちも、ようやくこの世界の名を知り大驚愕。重ねて神話や別惑星世界情勢にと、とんでも情報が異次元宇宙から大飛来し、極大衝撃と狂戦慄が全開バリバリ珍爆走。


『如何ニモ。前世デハ、奴ラノ‶長〟ニ不覚ヲトッタガ、今世デハ胞子一ツ残ラズ、一切合切、全テ喰ラッテヤロウゾ!』


 暗黒星ユゴスの知的生命は、菌類に属した種族。互いに手を取り合うなど論外。喰うか喰われるかの惑星支配権争いが、熾烈に繰り広げられていた模様。

 王であるハ=ゴスの復活より、ここ煉獄でも開戦必須の状況。


「まぁ、お前らがどこで誰と()り合おうが知ったこっちゃねーが、こっちとも一戦交えるんなら、来世なんかあると思うなよ。まるっと、がっつり浄化してやるよ」


『GIHAHAHA!ソレハ実ニ嘱望(ショクボウ)! 実ニ、悦楽極マロウゾ!──ダガ、シカシ』

「「「?」」」


 トールの次なる宣戦に愉快気に応じるも一転。仄暗い様相を醸し出すハ=ゴス。


『ミ=ゴハ、貴様ラニ取ッテモ無縁デハ無イ。寧ロ、貴様ラノ宿敵タル存在ニ繋ガロウ』


「は?どう言うことだよ?」


『‶ヴェルハディス〟──コノ名ニ聞キ覚エハアルカ?』


『『「「!!!!!!!」」』』


 その忌まわしき名に旅団一同騒然。知らぬ米兵チームは置いてきぼりの呆然。

 

 抑々(そもそも)、この煉獄への転移を含めた奇異な状況。数々の兇夢の戦い。

 これら一連災厄の首魁であり、最も忌むべき元凶が‶ヴェルハディス〟。


「ああ、そいつは俺らの最標的だよ。それがお前らの敵と繋がりがあるってのか?」


『然リ。奴ノ勢力ハ絶大。コノ地ノミ=ゴ族ハ、全テ『ヴェルハディス』指揮下ニ属ジテイル。()ワバ共通ノ怨敵』


「マジかよ……つか、まさか、お手手繋いで仲良く共闘とか寝ぼけた事は言わねーよな?」


 こんなクソキモ(可愛くない)生物種と、一時的でも同盟関係は絶対的に御免(こうむ)る。


『我トテ、ソレハ否ダ。慣レ合イナド断ジテ不可。虫唾ガ走ル』

「そりゃ、こっちのセリフだよ」


(シカ)ラバ、奴ラヲ往々(オウオウ)ニ掻キ回セ。ソノ機ニ乗ジテ、ミ=ゴノ(おさ)‶ヌガー=クトゥン〟ヲ喰ライ、一属全テ滅ッシヨウゾ』


「ヌガー=クトゥン?……まぁいい、互いに上手く利用してやろうって、ウィンウィンなクソ関係ね。それならオーケイ。そいつをガッツリ喰いたかったら、てめーらもきっちり働けよ。楽しておこぼれを頂こうとか、寄生虫だけに虫のいい話だからな」


『GIHAHAHA!ヨク(ノタマ)ウナ、魔王トールヨ!重々ニ肝ニ銘ジテオコウ!』


「つか、このエリアのてめーの兵隊を殆ど消しちまったが、残存兵力は、まさか後ろの二体だけってことはねーだろ? まぁ、少数精鋭でゲリラ作戦とかでも効果的ではあるがな」


 ハ=ゴスの認識では、問答無用でトールは【魔王】確定。この陣容では弁明の余地は無く「もう何でもいい、勝手に言えや」と、新たな偏見呼称を受け入れたようだ。


『フン、少数ハ貴様ラノ方ヨ。コノ地ハ、下級先兵ノ(ネグラ)程度。迷宮内モ含メ、地上ニモ我ガ軍勢ハ相当数、増殖シテオル。コレラハ、奴ラガ自ラノ餌ヤ駒ニスル為ニ繁殖サセタ様ダガ、元来、我ガ子タチ故ニ全テ貰イ受ケヨウ』


「あっちこちに、うじゃうじゃかよ……んで、親のまるっと総取りってわけか」

『『「「………」」』』

 

 その大量にょろにょろ、うねうね絵図を想像し、怖気寒気がわちゃわちゃと這いずり回る一同。


『トモアレ、我ノ再誕ハ、貴様ラ特質存在ガ(アラワ)レタ事デ、復讐ノ絶好機ト見ナシタ因果律ニヨル仕儀デアロウ』


「てめーの復活は俺らの所為かよ……寧ろ、呼び寄せたヴェルハディスのおかげじゃねーのか」

『ソノ点デハ、奴ニモ謝意ヲ示ソウ。ソシテ、貴様ラモ、勢力拡大タル陣容ヲ地上ニ取リ揃エテオルダロウ』


「あー、それはサウルの故郷の鬼種たちの事か?」

「確かに、我が鬼族同胞らが加われば、大勢力の陣容と成り得よう。ヴェルハディスとの全面戦争前に、是が非でも必要不可欠の事案だ」


『ソレダケデハ無カロウ。コノ上ニ在ル【ヴィヨンヌ】ナル都市ニ、少数デハアルガ、‶極メテ強者タル人種〟ノ布陣ガ見受ケラレタトノ情報ヲ得テイル』


「少数の強者の人種?」


『素性ハ知ラヌガ、別世界カラノ転移者デアロウ。ソノ呼称ハ──‶冒険者〟ト言ワレル者ラダ』


『『「「は?」」』』

 

 その情報元は、パラシア胞子ネットワークによるもの。彼らは、都市南壁外の森林域にて狩りをしていたの事。その際に数体のパラシアとラフレイダーが仕留められたが、その情報がハ=ゴスに伝わっていたのだ。


「冒険者?それってRPGとかファンタジー物語にある職業のやつか?」

「それよ。おそらく、カレンとトアたちと同様に、ヒュペルボリアから転移させられた者たちね」

(それがし)と弥宵も人化にて、度々冒険者稼業に従事しておったでござる』

『一度登録しておけば、街の出入り、他国への出入国、情報収集、魔物素材の売却など手軽に済む故、色々と有効利用していたでござりまするよ。その代わりに、それなりの‶実力経験〟が必要でありまする』


「あー、なるほどね、了解。で、その実力者たちがこの上にいるって事だな。うんじゃあまず、サウルたちの故郷に行く前に顔合わせをしておかねーとな」

「それが妥当ね。状況次第だけど、協力関係を築ける可能性がかなり高いと思うわ」

「オーケイ、決まりだな」


 リディ、黒鉄、弥宵からの捕捉で理解したトールであったが、話の流れに取り残され、ポカ~ンの米兵チーム。それはさて置き、ハ=ゴスとの首脳対談は続く。


『陣容ノ強化ハ結構ダガ、別ノ()()()()()ノ動キモ考慮セネバナラヌゾ』


 ヴェルハディス軍、ハ=ゴス勢、鬼国、冒険者たち、そして、この幻浪旅団。

各敵対、協力(予定)派閥勢力が軒を連ね、更にここに加わる懸念すべきは──。


「別の厄介な存在?……あー、それは──‶ギュスターヴ〟か。それと‶執行者(エグゼクター)〟だったか?」


『然リ。奴ラハ、死ヲ超越シタ存在。徒党ヲ組ム事ハ皆無デアルガ、各々ノ意思デ標的ト定メタ者ヲ、確実ニ抹消スルベク顕レルデアロウ』


「あー、めんどくせー連中の様だが、避けられねー場合は()るしかねーだろ」


『GIHAHA! 実ニ豪気ヨノウ!ダガ、生類摂理ノ虜囚ガ、アレノ(コトワリ)(クツガエ)シ抗ウナラ、壮烈タル決死戦ヲ(シカ)ト覚悟セヨ!』


「忠告どーも。それと、てめーの方も兵隊を削られたく無かったら、とち狂ってこっち襲い掛かってこねーよう、首輪を付けておけよー」


『言ワレルマデモ無ク、ソノツモリダ。貴様ラトノ闘争ハ、ミ=ゴ属全テヲ喰ライ、全テ(カタ)ガ付キ次第必須。ソレヲ努々(ゆめゆめ)忘ルルナ』


「忘れるかボケ。てめーが喰った仲間たちの代償は、きっちり支払ってもらうからなー」


『ソレハ、コチラトテ同ジ。数デ言エバ、我ラノ方ガ甚大。──コノ件ニ関シテ、コレ以上ノ問答ハ不毛。正義ヲ唱エルナラバ、然ルベキ血戦ニテ己ガ力デ示セ』


「うっせ!話が済んだなら、とっとと失せろ」


『フン、言ワレルマデモ無イ。ソレヨリ早速、()()()()ガ舞イ込ンデ来タ様ダ。コレハ、重畳。──デハ、サラバダ魔王トールヨ』


 何かを察知したハ=ゴスは、慌ただしくもドォン!と、高射砲のように何処かへと跳び去っていった。続きソ=ドムとゴ=モラも同様に後を追う。


 大戦(おおいくさ)最中に、突如始まった地球外寄生生物の王と、鬼と魔獣を引き連れた地球人と言った、混沌過ぎる異次元超異種首脳対談は、こうして幕を閉じたのであった。


「好物?飯か?まぁ、どうでもいい。こっちも飯にすんぞー!」

『『やったー飯ーっ!!』』

「やっとね……あなたも食べるでしょ、クロエ?」

「え?はぁ、まぁ……この面々でいったい何を食料に……」


『『『ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』』』

『なんやねん、どいつこいつも。一日くらい食わんでも死なへんて。しゃーないからウチも食うたるがなボケカス』


「「「………」」」


 大分遅くなったようやくのディナータイムに、一斉狂歓喜の咆哮を上げる旅団陣営。完全理解不能の米兵チームは、連続ポカ~ン選手権、記録更新中。






 対談終了数分前。その混沌絵図を、離れた上空から観察する存在。


「どう云う事でやんすか…?このセクター40の中央が直線状に焼野原で、ラフレイダーが一掃されてるでやんすよ べらんめぇ」


 それは、ミ=ゴだ。黒鉄と弥宵が仕込んだトラップ祭りを掻い潜り、ここ旧セントラリア地下街に辿り着いたはいいが、理解に苦しむ散々たる状況。


「それと、なんでやんすかねあの集団は…? 何やら話込んでいる様でやんすが……鬼種、魔獣種と……地球人…?で、あの中心にいるのは……あれは…ラフレイダー三体…しかも特異種…?いや、一体は別物。まさか……」


 この混沌絵図状況を、一目で察する事は不可。せめて、その陣容の把握をと、一体の存在が目に付いた。それは──。


「ハ=ゴス!!何故奴が!?これは色々と(まず)いでやんすよ。あっ!気づかれたでやんす!こっち来やした!!ギャー!!撤退でやんすぅううううう!!」


 情報収取どころか、速攻で危機的状況に陥ったミ=ゴ。

 訳が分からないままの早期撤収&大逃走劇。

 パニくり過ぎて‶転移能力〟の事なども何処かへと忘却。


『GIHAHAHAHAHAHAHA!!』  




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