表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モータルワールド~現代チート?海兵隊超兵士の黙示録戦線~【修正版】  作者: うがの輝成
第6章 断罪のレクイエム
133/161

第133話 ファントム




「あーあー、ヤンスヤンスでやんす。‶ヴァルミア〟チェック。

聞こえやすか、ヴェルハディスの旦那ー? こちとらミ=ゴ()でやんす」


〘──ふむ、良好。それで‶あれ〟の様態は確認できたのであろうな〙


 それは、薄桃色の甲殻類にして菌類生物。地球を遥かに超える文明を持つ『暗黒星ユゴス人』と其の主、死霊魔術師(ネクロマンサー)にして『大魔王オーバーロード』との魔力通信とは異なる思念通話。


 亜空間通信 Valmia(ヴァルミア)は、宇宙での超長距離、異次元間に於いて様々な阻害(ジャミング)を受けずにほぼ時間差無く、交信可能となった超科学技術通信伝達システム。


「へい、それでやんすが……。旦那の指示通り、現在セクター46 特別区におりやして、周辺を一通り見回ったでやんすがドゥルナスの連中同様、こっちも空っぽでやして……」


〘何? 空っぽだと… つまりは、術式陣にて不死(イモータル)化したフェンリルの仔らが消え失せたという事か〙


「へい、それもでやんすけど、地獄(ゲヘナ)から召喚(コンバート)し、放し飼いにしていた‶番兵ユニット〟の群も含めて、地球からの‶選別者〟二名も収容所からとんずらでやんすー。

おまけにその選別プログラムも消滅し、それ以後の(ふるい)分けはされなかった様で他の捕獲者はゼロ。それで空っぽと云う事でやんした、べらんめぇ!」


 煉獄城トゥヌクダルスをセクター1とした『セクター46 特別収容区』。そこは、トールとリディが煉獄転移直後の開始地点。そして、カレンとトアが邪導術式で囚われていた地下エリア。


 その利用目的は、極めて有能な者を無傷で転移収容し‶魔改造〟。それをヴェルハディスの歩兵駒とするべくとしたイカれたもの。

 その中でも優秀なMVP選出者は高位の指揮系統と、トールたちが宿泊に利用した地下リゾート施設を拠点として褒章贈呈。と言ったダークブラックでありつつ、結構なホワイト好待遇。

 

〘どう云う事だ。選別術式まで…まさかあの悪魔(アリ)どもが、勝手気ままに掘り進めて破壊などとの間抜けな話ではあるまいな〙


「あの術式装置の隔壁は、あっしらユゴス宇宙艦の外壁装甲にも使われる『ナクア』と『マグナ』の複合素材。あれは、ナノテクノロジーによって作られた自己修復性の金属と、高磁性金属。宇宙線や小惑星などの衝突にも耐えられ、強力な磁場を発生させ、砲撃弾頭、レーザーも跳ね返しやすから、例え上級の悪魔でも破壊は絶対不可能でやんすよ」


〘その隔壁に損壊、自己修復の痕跡も無く、術式だけ破壊されたと云う事か〙


「その通りでやんす! あの選別転移システムプログラムは、旦那の力にあっしらのトランスワープ技術が加えられ、個体波動検知と正確な亜空座標ルート演算設定にどえれぇ苦労したのが、全部おしゃかでやんすよ、てやんでぇい!」


 その選別は、メンタル体と呼ばれる肉体(エーテル)及び精神体(アストラル)。魂体であり、その根幹、因果(コーザル)体。これらの波動力(オーラ)を検知して、基準を超えた特異者が選出される。要するにクっソ元気な奴。

 尚、これはメンタル体が未成熟な地球人側サイドに施されたシステム。特異な潜在能力を持ち得た者が、知らぬ間に他生物に喰われたら元も子も無いと云う事。

 

 カレンとトアの場合は、ピンポイント狙いで転移。ミゼーアも同様に別エリアにて強力な術式で捕縛されていたが、神狼女王には通じず、自らで打破していた。


 選出外の地球人及び、強メンタル体の冒険者サイドは、セクター分けされた各農場(ファーム)に送られ、家畜扱いで自由放牧。後は煉獄のデスサバゲ―仕様に委ね、自然の大(ふるい)掛けにて振り分け選抜。

 生存を続けた勝者は、強駒用にゲット。敗者は、各セクターに置かれた集積装置により生命力と魔力(アニマ)を抽出。アンデッド化したなら、それもまるっと神ゲット。


 と、言った流れの大収穫祭(ワッショイ)プログラム内容であったが、ここで想定外の支障が起きてしまった。


 その実は、カレンとトアを救出後、トールとリディがリゾート施設宿泊時、この二人による最高級ギター&ピアノでの幻想演奏会(第82話)にて、意図せずの球状広範囲聖域化。これによって、その範囲内に隠されていた【邪導(メナス)】所以の選別術式陣が消去されていた事は、誰も知る由もない迷宮入り未解決事件。


〘……損失ばかりの報告だけでは、全く要点が得られぬな。それで、何か痕跡は残されておらぬのか?〙


 冷静さを装いつつも、内心では余り穏やかでは無い様子のヴェルハディス。


「へい、残されたものと言えば、まず二名の地球人の収容部屋。部屋の中には、簡易食の包装とタバコの吸い殻だけでやんすが、どちらも中から鉄製扉がぶち破られておりやす」

〘ふむ、兵士である事から爆発物によるものか〙

「いえ、ひしゃげたその鉄製扉には共に足跡。つまりは蹴りによるもの。通常の地球人ではあり得ねぇ、爆発物並みの威力でやんす」


〘…なるほど。選別されただけはあると云う事か。地球史実上の武人で、それぐらいの膂力を持ち得た者はそう珍しくは無い。あり得る話であろう〙

「まぁ、そうなんでやすが、他にも不可解な点が幾つかありやして……」

〘不可解な点? ふむ、続けよ〙


「へい、その地球人らと悪魔(ユニット)たちとの交戦の痕跡がありやして、アサルトライフル5.56mm弾の空薬莢と空弾倉。ざっと見、200発前後の使用が見られやしたが、その悪魔たちの死骸はおろか、血の一滴すら残されてないでやんす」

〘何? 悪魔(アリ)どもが、完全に消滅したという事か? 僅か二名の銃弾だけでそれはあり得ぬ……。他には?〙


「へい、これはかなり不可解極まりやして、セクター46拠点予定施設。フェンリルの仔らの捕縛部屋に通じる防壁扉周辺の一角が、全て銀灰色の重金属で埋まっておりやして……成分分析の結果がこれまた、てやんでぇい。タングステンを主成分とした鉄、ニッケルとの高密度の焼結合金──『ヘビーアロイ』製でやんす!」


 それは、リディが例のリゾート施設再利用の為、良からぬ輩に侵入されぬよう施した、土精霊魔術【銀灰鋼壁(ウォル・フラム)】によるタングステン製防壁であった。そんな事など当然知り得ないが、リディにしても、まさか家主(オーナー)関係者が訪れていた亊など露知らず。


 因みに『ヘビーアロイ』は二種類あり、銅、ニッケル合金型の場合は、熱伝導性に優れた「非磁性材」。鉄、ニッケルとの合金型の「弱磁性材」は膨張強度や伸びに優れた性質。二種共に純タングステン製より酸化に強く、高密度により放射線の遮蔽能力にも優れた仕様。


〘!? どう云う事だ。そんなものは通常人力では不可。仮にヒュペルボリアの土魔術(テラギア)による防壁形成だとしても、最高位は鉄と炭素の合金。鋼鉄製が限度であったはず。そもそも、タングステンは地球原産のレアメタル……〙


「それで、転移陣(トランスポート)を使って中に入れたんでやんすが、フェンリルの仔らの幽閉部屋の拘束術式も消え失せ、代わりに地球のものと思われる食事の形跡……この状況、どう推測されるでやんすか、旦那…?」


〘フェンリルの仔らは、その地球人らに救い出されたと云う事なのか……。

たった二名で悪魔の群を消滅。且つ、拘束とその防衛及び選別術式まで破壊。

更に、タングステン合金製隔壁を構築錬成……。断定はできぬが、その地球人らは

(ヘルメス)〟の手の者か、もしくは新手の第三者か……〙


「あっしもその辺りを考えたんでやすが、情報が乏しく不確定でやんすよ。それでセクター45から44、ドゥルナス拠点に繋がる道中周辺の地獄昆蟲(ゲヘナインセクター)、地下水路の悪魔の群も消滅。エリアボスの化け物は粉々の微塵切り。どれもえげつねぇ戦闘の痕が刻まれてやした……」


〘莫迦な。あれらは数千単位の数は生息していたはず。あの‶呪怨獣(エリアボス)〟に於いては

‶禍つ神〟の類。それら全てが屠られたのか……。さすれば、地球人以外の存在である事は確実か〙


〘でやんすね……おそらく、ドゥルナスも軍ごと其の‶何か〟に……しかし、あの6万を超える異形軍勢を相手にとなると、かなりの戦力規模が必須でやすが、それらも一切確認できずで、まるで掴みどころの無ぇ‶幻影(ファントム)〟でやんすよ、べらんめぇ!」


〘……ふむ。()()()()()()()を使い、追って精緻なる調査の手が必要だが‶ギュスターヴ〟が邪魔だな。亡者殺戮魔人と化した奴には、対話は不可。死霊魔術(ネクロマンシー)による使役化も含め、如何なる攻撃術式も無効化。‶武の真意の極み〟が故に、あらゆる膂力、幾多の数を揃えようとも、無尽蔵の精力にて一切合切、木っ端微塵にされよう〙


「あれの討伐に、あっしらユゴス人ミ=ゴ属を含め甚大な被害を被り、已む無く全面撤退。不可侵存在として認定されたでやんすけど、‶属長〟がかなりゴネておりやしたね」


〘ミ=ゴ属長‶ヌガー=クトゥン〟か。ふむ放って置け。そんな事より忌々しいが、ギュスターヴは聖にも邪にも属さぬ荒魂(あらみたま)、荒神の類。()()()()()()で、わざわざ無駄に災いを被りに向かう必要は無かろう〙


 正に触らぬ神に祟りなし。触れざる事無く近寄るべからず、放置プレイ。

 だが、支配下の地に別の支配存在など断じて許されざる事柄。

 それは、ギュスターヴだけでは無く、執行者(エグゼクター)たちもその範疇。

 

 誰が‶真意の極み〟に至るか、誰が真の‶不滅者(イモータル)〟かを示すべく、この地の完全支配もその目的事項の一つとなっている。故に、ヴェルハディスが完全復活の際には、自らでそれらと相対せす意趣が、暗黙ながらも明瞭に露わにしていた。


〘何にせよ、奴との接触は避け、まずはその‶幻影(ファントム)〟の視認確認を最優先とし、追ってその正体を探り報告せよ〙


「へい!合点承知のすけべぇ! では、早速その足取りの痕跡を追うでやんす!」


 と、トールたち幻浪旅団(ファントム)は、ギュスターヴの所業と一色譚にされ、ヴェルハディス陣営に標的認定(ロックオン)。ついに追われる嵌めとなってしまったが──。




「あー黒鉄、弥宵。地面の影をちょいちょい後方に向かわしてるけど、何してんだ?」


『はっ! 隠蔽用影忍術にて、某らの行く先を(くせ)者に気取られぬよう、各足跡を消したり、方向を変え別の道へと向かわせたりと、陽動の手を打っておるでござる』


『他にも、足跡を追っているつもりが、堂々巡りをさせるなどの細工や、幾種もの殺傷罠、設置型幻術式なども張り巡らせており、どこまで行っても幻影を追うか、その果てにて身を滅すかでござりまする』


「どんだけだよ。さすが忍狼、徹底してんな……」

隠遁(いんとん) 幻 鈍駄掛(まぼろし どんだけ)の術。我々忍びは、何者にも決して行動を悟られてはならぬ故に、当然の基本心得でございますね』


『なんやねん自分ら、ひょいひょいチョロチョロ、影が行き交っとると思うとったら、そない云う事やったんかボケ』


『まぼろし~~~!!なの』

『どんだけ~~~~!!だね』

『背負い投げ~~~フィィ!』


「フフフ、どこのイッコーさんかしら?」


「イッコー山? その様な恐ろしき迷いの山があるのか……」

「そがぃは、ぶちヤバな忌み地の山の様じゃあのう」

「サウル、ゲバル。多分ソレハ違ウト思ウゾ……」


 と、未だ()()()()に足取りは掴まれてはおらず、どこ吹く風かと、わいわいエンジョイ中。ヴェルハディス陣営は、そんな事など()()にも及ばずの状況であったと云う。

 


 ここまで拝読ありがとうございますm(__)m


 今回、SF的な要素をちょろちょろ注いでいましたが、亜空間通信「ヴァルミア」は、バルカン語の亜空間の意味「Vartan(ヴァルタン)」と、イタリア語の通信を意味する「comunicare( コムニカーレ)」を合わせた造語です。


 宇宙艦外壁素材「マグナ」はオリジナルですが『ナクア』は、アメリカの科学者であり、SF、ファンタジー作家でもある「ダン・コボルト氏」のブログに掲案されていた架空物質から引用しました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ