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半端なパナコの異世界転生  作者: 金剛マエストロ
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-03-

弓使いの美女と対決したパナコだが・・・

 疑念は確信に変化した。

 ギニーネの魔弓は、すべて紙一重で回避された。

 いや、正確を言えば、最後の一本だけは、パナコを捉えていた。

 振り返ったパナコの乱杭歯が、ギニーネの放った矢を弾いたものの、その拍子に矢羽がパナコの頬をビンタして、パナコは意識を失った。

(一度目は、偶然だったかもしれない。

 だが、二回連続して同じことが起ったならば、それは、もはや必然だ。)

 すっかり見慣れたパナコの寝顔は、前回と同様に、緊張感とは無縁のものだ。

(ふむ。

 詰まらない役目を押し付けられたかと思っていたが、退屈しのぎ程度には楽しめそうだな。)

 手を伸ばし、パナコの髪をそっと撫でるリーグの眼差しには、厳しさと優しさが同居しているようだった。


 程なく目を覚ましたパナコが身体を起こすと、ポタリと何かが口元から落ちた。

 拾い上げてみると、手の中で双つに割れた。

 それは、パナコの乱杭歯のなれの果てだった。

 思わず口元に手をやると、確かに、右上の牙がない。

 いや、正確には、短い歯が半分ほど顔を出していて、何だかむず痒い感触がある。

(この年で、乳歯ってわけじゃないだろうから・・・)

 魔族の身体は、再生能力が高いらしい。

 体のあちこちを矢じりが削っていった筈だが、今は痕跡もない。

(痛くないのはありがたいけど、人間辞めた感が強すぎるなッ!)

 問題は、そんな自分の境遇を、決して嫌なものだとは思えないこと。

 何事もなければ無難に、人としての凡庸な一生を終えられた筈(?)なのに、気が付けば知らない世界で魔族の身体を得て、強制的に戦いに参加させられようとしている・・・らしい。

 めんどくさいことになったな~と思う一方で、未知の世界への興味も湧いてきた。

(そう言えば、リーグさんは魔技とか言ってたっけ。)

 魔技。

 言葉自体は分からなくても、言っていることの意味は分かるという状態だから、魔技と言うのが、魔力を使う何かの技だということは理解した。

 でも、それが具体的に、どんなものかは不明だ。

 異世界ものと言えば、剣と魔法の世界と相場は決まっているけど、今のところ、剣と弓は目にしたけども、それは普通に、前世の中世とかと、似た感じだと思う。

 もっとも、剣も弓も、それを扱う二人の姿は、まさしくファンタジー世界の登場人物だったけども。

 そう言えば、弓使いの美女の名前は聞いてなかった。

 リーグとの会話からすると、美女はリーグに気がある(?)ようだが、リーグにはまったくその気はないようだ。

 それでいて、先に闘技場で待っていたり、リーグの言う通りに行動しているところを見ると、明らかに上下関係があるらしい。

 魔王城という言葉をリーグは口にしていたけれども、魔王配下の者たちの中で、リーグやあの美女は、いったい、どのくらいの立場なんだろう?

 朝食の時に使った部屋の広さや、闘技場を占有して使えると言うことから察するに、下っ端の方じゃないと思うけど・・・

 色々と考えを巡らせてみたが、現状では、とにかく情報が少なすぎた。

 正直、リーグが求める戦力にはなれなさそうだけど、まだ見捨てられてはいなさそうだし、なるようにしかならないか~と思って、改めて寝台に横になる。

(・・・えっ!?)

 目の前に見知らぬ男の顔があって、息が止まった。

「だ、誰?」

 言葉は通じていない筈なのに、意図は伝わった・・・らしい?

 端正な顔立ちが、ゆるりと笑みをつくる。

 ゆっくりと顔が近づき、おでこがほとんど接触するところで止まる。

 深緑色の前髪が、パナコの額にかかって、こそばゆい。

 見下ろす淡い緑色の瞳からは、何を考えているかまでは読み取れない。

 どうしたらいいのか分からないまま見つめ合っていると、不意に男の輪郭が揺らいだ。

(な、何?)

 見る間に男の姿は透き通り、フッと消えた。

(いったい、何だったんだろう?)

 パナコの額には、まだ、先の男の髪の感触が残っている。

 どうやら、夢や幻ではなかったようだ。

 だとすれば、あの男はいったい何をしに、パナコの部屋に来たのだろうか?

 ゾクリと寒気を感じて、パナコは自分の身体を抱きしめていた。

作者から一言:なんだかんだ言って、マイペースなパナコです。

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