-02-
召喚責任者を名乗るリーグに腕試しされるパナコですが・・・
朝食は、存外に普通な感じだった。
魔族の食事なんて言うと、血の滴る動物の生肉とか、怪しげな匂いと色合いの謎スープとかを警戒(期待?)していたのだが、ホカホカのできたてパンや、湯気の立っているスープ、半分に切ってある果物などを、ちゃんと道具を使って食べるスタイルだった。
まぁ、味は心持ち薄めだったけど、何が起こるか予想もできない異世界で、まともな食べ物にありつけただけで、パナコとしては取り合えず満足だ。
食欲が満たされて、お茶をズズズとすすっているパナコにはもはや、生命の危機感は皆無である。
そんなパナコに、不気味なほど穏やかな表情のリーグが、
『其方の能力は、いまだ未知数だ。
まずは今一度、武技の見極めを行う。
その後、魔技を見極める。』
(うわー、また戦いか~
でも、魔技ってなんだろ?
魔法とは、ちょっと違う?)
コロコロと変わるパナコの表情に、リーグはわずかに眉を顰める。
興味深げにリーグを見返すパナコの心情は、リーグには今一つ読み切れなかった。
食欲が満たされて程なく、パナコはリーグに誘われて、闘技場のような場所に連れてこられた。
広さは、場末の野球場ぐらい。
地面はしっかり踏み固められ、周囲を段になった観客席で囲まれている。
ただし、観客の姿はない。
闘技場の真ん中辺りに、誰かが立っていた。
体形にフィットしたドレスを身にまとっているように見えるが、もしかすると、あれも体毛なのだろうか?
朝起きた時、ふと気になって自分の体を探ってみたら、衣類の類は何も身に着けていないことに気が付いた。
もっとも、全身が体毛に覆われていることもあり、不思議と羞恥心などは感じていない。
胸元を見下ろしてみても、地肌が露出している部分がほとんどないので、気になる部分は、他人からは直接見えていない筈だ。
『待たせたな。』
『いくら誘ってもつれない貴方が、今日は、どんな風の吹きまわしかしら?』
艶やかにほほ笑む美女の口元から零れる牙が、キラリと輝く。
リーグ同様、明らかに肉食系の笑みだ。
さり気に手にした弓が、剣呑さに輪をかけている。
冷徹な蒼い瞳が、パナコに向けられた。
『なるほど・・・『それ』が、わたしをここに呼んだ理由と言うわけね。』
『それ』って、随分と酷い言われようだが、不思議と、言葉の字面ほどには敵視されていないようだ。
むしろ、パナコに対しては存外に興味深げな眼差しだ。
『加減は無用だ。
殺さなければ、何をしても構わない。』
(えっ?マジ?)
「いや、ちょっと、それは・・・」
あくまで真顔のリーグと、舌なめずりの美女。
これ、ホントにヤバいヤツだ。
そう思った時には、勝手に手足が動いていた。
美女に背を向け、走り出す。
『あらあら、そんなに慌てなくても、よろしくってよ。』
口調も声音も穏やかなのに、殺気だけが恐ろしい勢いで背中に突き刺さる。
いや、突き刺さりそうだったので、必死の思いで回避した。
ビシっ!ビシっ!と、かわし切れない矢羽が肌を叩く。
避けられない!と思った瞬間、視界が反転した。
激しい衝撃が、パナコの意識を消し飛ばす。
(あ、なんか、前にも同じことがあったよう・・・な・・・)
作者より一言:エロいお姉さんは大好きです。